第十八話
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提出する報告書は捏造の粋を凝らした詐術の芸術品と呼べる仕上がりになる予定だった。
『事情は把握した。前星間文明種との接触の件だが貴官が処分される事は無いだろう。今回のような事故による連盟加盟以前の国家との接触事例は過去20年間だけでも6例存在するが、指揮官の明確な判断ミスにより文明種族の母星への墜落と言う事態を引き起こした事例を除けば、責任者が処罰された例は無い』
少将の言葉にほっとする一方で、そいつは一体何をやらかしたんだろうとエルシャンは思う。
『そして准将の今後の処遇だが、まずは中将への二階級特進は正式に取り消される』
『はい』
これは当然のことだった。連盟軍は各加盟国の軍組織を手本に作られているため、ほとんど適用される事無い空文化した制度も引き継いでいたが、本来殉職による二階級特進は残された遺族への年金の増額による生活支援を目的とした制度でため、生存が確認されれば特進した階級に留まれない。
またフルント星陥落以降の戦いにおけるエルシャンの戦果が彼の論功行賞論に影響を与える事は無かった。彼の准将としての階級は艦隊指揮官としての地位でありパイロットとしてのものではなかった為である。
『それからこれが本題なのだが……残念ながら現在、方面軍全軍においてパイロットが不足しているために、君の艦隊にパイロットを回す事は出来ない』
パイロットとして活躍し実績を重ね名声を得ているエルシャンだが、指揮官としては何の実績も名声も無い。彼が指揮する艦隊にパイロット配属させるくらいなら、定員割れを起してる他の艦隊への配属を優先させるのも当然だった。
『麾下の第1211基幹艦隊および、旧フルント艦隊は引き続き貴官の麾下とする。戦力の拡充に努み、また療養に励んで欲しい』
つまりエルシャンは軍に籍を残すものの、何の仕事も与えられないと言う事だった。
しかし、そんな立場に甘んじて無為に日々を送るつもりは彼には無かった。
『ガッパー少将。パイロット不足に関することで報告したい事があります』
『何かね?』
『出来れは少将お1人に報告したいのですが……』
少将は画面越しに訝しげな表情を向けるが、エルシャンはじっと少将の目を見つめ返す。
『……分かった。五分後にこちらから連絡を入れる』
父親に良く似た彼の瞳に、少将は1つため息を漏らすと応じる事にした。
『ありがとうございます』
5分後、ガッパー少将から通信を入れると直ぐに、待ち構えていたエルシャンと繋がる。
『時間を頂きありがとうございます』
治療用タンクベッドのカプセルの中でぎこちなく首を前に傾けるようとするエルシャンに、少将は『療養に励めと言ったはずだ』と諌める。
『では准将。貴官の話とやらを聞かせてもらおう』
『私が保護した前星間文明種族、地球人、6名にパイロッ
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