■■SAO編 主人公:マルバ■■
壊れゆく世界◆ユイ――MHCP001
第三十九話 ミズキ
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す」
「事故のショック、ねぇ」
「心当たりはありますか?」
「うーん……その事故、交通事故だったんだが、運転してたトラックで人を撥ねちまったらしいんだよ。最も、俺は気を失ってたからそいつのことを覚えてるはずはねぇんだけどな? ただ、俺は人を傷つけるのが嫌いでね。親父がやくざだったもんだから暴力沙汰とか見慣れてんだが、子供の頃、鉄砲で一人殺られるのを見ちまってな。ちょっとしたトラウマになってんだよ。それだもんで、もし俺が誰か殺しちまったんじゃねぇかと思うと……」
ミズキはそこで言葉を切った。脚が震えている。アイリアが寄り添い、その背を優しく撫でた。
ユイが言葉を発しようとしたが、マルバが左手を挙げてそれを制した。かなり動揺している。
「ミズキ、その名前……まさか、リアルネームじゃないよね?」
「あ? ……ああ、実名だぜ。それがどうかしたか?」
マルバは絶句した。口を開くが、何も言葉が出てこない。言葉を発そうと挑戦し、その度に口を閉じ、それを四回繰り返した後、かすれた声でつぶやいた。
「翠川瑞樹、二十三歳。トラックを運転中に突発性心不全で人事不省に陥り、ブロック塀に衝突して重症を負う。二年前、僕がここにくる時点では……彼は話すことができない状態だと聞いた。会話も仮想空間でしか行えない状態だ、と」
「お前……なんでそんなこと、知ってんだ……?」
マルバはようやくミズキを正面から見た。相変わらずかすれた声で、囁くように、彼は告げる。
「ミズキ……あれは君だったんだね。君が、僕を撥ねたんだ」
ミズキは呆然としている。マルバはそんなミズキを見下ろし、またこちらも何も言わない。沈黙があたりを支配した。
その沈黙を最初に破ったのは、ユイだった。切羽詰まったようにミズキに駆け寄り、その肩を掴む。
「おじちゃん? おじちゃん!! 気をしっかり持ってください!!」
「あ……ああ……」
「おじちゃん! おじちゃんっ!!」
「あ、ああああああああああッッッ!!!! ぐあああああああぁぁぁぁアアアアアアアァァァァァッ!!!」
一瞬にして、ユイの周囲を大量のモニタリングスクリーンが取り囲んだ。様々なグラフが表示されるが、そのうちの一つが真っ赤な警告色に染まり、その写しているグラフは恐ろしく波打っている。その画面に書かれている文字は……ECG。
ミズキの足元が揺らいだ。その胸の前にディスコネクション警告が踊る。ナーヴギアが異常を察知し、強制ログアウトを実行しようとしている。ユイは必死の表情でそれを防ごうとした。ログアウトは死を意味するからだ。ユイの手は黒い石に押し付けられ、管理者権限を用いてログアウトを阻止していた。
「ミズキ!!
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