暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■SAO編 主人公:マルバ■■
壊れゆく世界◆ユイ――MHCP001
第三十九話 ミズキ
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くれる医者がいなかったもんで、助かるぜ。ありがとな」
「いえ……私は何もできませんから……。お力になれなくて、すみません」
「気にすんな。MHCP(メンタルヘルス・カウンセリングプログラム)なんだろ? 身体の相談もできるんならPHCP(フィジカルヘルス・カウンセリングプログラム)になっちまうじゃねぇか。……それで、だ。お前さんの専門分野について聞こうじゃないか」
「精神的な障害、ですか?」
「ああ、そうだ。事故以来あっちこっち壊れちまってるからな、正常じゃねぇのは分かってる。でもな、精神的な問題もあると思うんだよ」
「……おじちゃんの力になれるかは分かりませんが、頑張ってみます。症状を教えてください」
「ああ、ええとな。前向性健忘……って言ゃあいいのか? 事故より後は普通に思い出せるんだが、記憶の保持できる期間が十七日間だけなんだ。あと、事故直前の……そうだな、一週間ほどの記憶がねぇ」

 ミズキの言葉に、全員が目を剥いた。
「ちょっ……ミズキ! 君一体どうしてそんな状態で……!」
「フィールドに出たかって? んなもん知るかよ。覚えてねぇよ」
「いやそうかもしれないけどさ! それじゃなんで僕のこととか覚えてられるんだよ!?」
「十七日間会ってなきゃ忘れるだろうな、そりゃ」
「……ッ!! それじゃ、なんでここがデスゲームだとか、ゲーム世界の中だとか、そういうことは!?」
「それはほら、こいつだ」
 ミズキは開いたままの分厚い書籍アイテムをポンポンと叩いた。
「何かある度にこいつに記録してんだよ。写真とか付けてな」
「まさか、それじゃ……それは、日記なんかじゃなくて……」
「そうさ、こいつが俺の全て、普通の人間の記憶の代わりをするもの。ここに来てすぐにつけ始め、必ず十七日に一度は読み返してんだ」
「そんな……ことって……」

 マルバは目を伏せ、今度はアイリアに尋ねた。
「葵は……知ってたのか……?」
「うん、私が告白した時にね。こんな俺でも付き合ってくれるのか、って言われた」
「そんなこともあったらしいな。音声記録まで残ってるぜ。この時の俺はよっぽど嬉しかったらしい」
「ちょっと、ミズキ。恥ずかしいからそんなこと言わないでよ……」

 ミズキは再びユイに向き直った。
「それで、どうだ」
「……前向性健忘の方は十中八九外傷性のものですね。海馬、つまり記憶を司る部位からの信号が受け取れないため詳細は全く分かりませんが、過去の治療の情報を参照しても外傷性の可能性が最も高いです。逆行性健忘――あ、こちらは事故以前の記憶がないというものですが、こちらは外傷性の可能性も心因性の可能性も両方あります。事故のショックで失った記憶が戻らないということはよくありますが、そのショックの原因を取り除けば改善する場合が多いで
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