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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
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第二話「侵入者」
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「――! で、出たぁぁぁ!」
「あ、悪魔だッ! 黒い悪魔だァァ!」
姉さんの登場に男たちが武器を取り出しながら散開する。糸目の男は双眸から憎悪の涙を流していた。
「はは……。やっと会えたね、出てきて嬉しいよ。お前が私たちにしたことを忘れたとは言わせない……。その報い、今こそ受けるといいね」
「悪魔め、殺すッ!」
「殺すッ、殺すッ!」
向けられるいくつもの敵意と殺意。しかし姉さんはどこ吹く風で私の安否を心配した。
「……大丈夫、萌香? 酷いことされなかった? 対不起、折角できた妹を私のせいで危険な目に遭わせてしまって……」
私の手を取り真摯に謝罪を口にする姉さん。その目には、どこか兄さんと似た色を垣間見た気がした。
無視をされた男たちのこめかみに青筋が浮かぶ。
「てめぇぇぇ……どこまでもコケにしやがって! ブッ殺してやる!」
「――!? 危ない、姉さん!」
男の一人が青竜刀を片手に背後から姉さんに襲い掛かる。姉さんは咄嗟に叫んでしまった私に微笑むと、振り返り腕を一閃。姉さんの腕は男の胴を易々と通過し、二つに分断した。
「堵寵! キサマっ!」
「私に恨みがあるなら最初から私を狙って来い。それも出来ない小者が、私の大切な妹に触れるな」
「まったくもってその通りだな」
どこからともなく第三者の声が
降ってきた
(
・・・・・
)
。
「ぶべっ!?」
上空から高速で下降してきた人影は落下地点にいたスーツ姿の男の頭を踏み砕き着地する。あまりの衝撃で地面が陥没し、男の上半身の半ばまでが地面に埋まった。
「兄さん!」
「あや〜、すごい登場の仕方」
兄さんの姿を目にすると、何とも言えない安心感が心の底から生じた。兄さんが来たからにはもう大丈夫だ。
男たちは突然の乱入者に浮き足が立つ。
「な、なんだてめぇは!?」
「こいつも悪魔の関係者か!」
しかし、兄さんは身も凍るような殺気を放ち、男たちを睨みつけた。
「お前ら……俺の可愛い妹たちに手を出したんだ。生きてここから帰れると思うなよ……」
地獄の底から聞こえるような低い声に男たちの身体が震える。糸目の男は自らを鼓舞するように手を振った。
「ええいっ、人間如きに何ができる! さっさと殺しちまえ!」
男の言葉に呼応するように男たちが一斉に兄さんに躍り掛かる。前に出ようとする姉さんを目で制した兄さんは深く息を吐いた。
「コォオオォォォ……」
呼気とともに白い吐息を零す兄さんは次の瞬間、その場から掻き消えた。
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