暁 〜小説投稿サイト〜
失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始前
第一話「中国からの来訪者」
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
て、いかん!


「――破山撞肘」


 腹部にもの凄い衝撃が走る! 咄嗟に地面を蹴って後方に跳躍したが、一割程ダメージをもらってしまった。これが中国拳法か……。


「あや〜、今ので決めるつもりだったのに跳んで威力を軽減させるなんて。流石は『殲滅鬼』ね」


「いや、驚いたよ。君の年でこれほどの使い手がいるなんてね。これは思っていたより楽しめそうだ……」


 こちらも少々ギアを上げていこうか。己の心の内にあるスイッチを一つ、二つと入れていく。


 俺の纏っている空気が変わったのを察したのか、亞愛の頬に冷や汗が伝う。


「ん〜、これは私もヤバいかも。尋常じゃない殺気……素敵、いい兄妹になれそうね私たち」


 不敵な笑みを浮かべた亞愛が再び構える。互いに動き出そうと重心を爪先に移動させたその時、一際大きい拍手がホールに響き渡った。


「そこまで。ありがとう亞愛、君の実力はよくわかった。正直期待以上だったよ」


 親父の言葉に一礼する亞愛。


「ありがとうございます、お父様」


「うむ。今日はゆっくり休んで、旅の疲れを癒しなさい」


 むう、もう少し手合わせしていたかったが、仕方がないな。またの機会にしよう。


「ふ、ふんっ。あんなの大したことないもんっ。千夜兄さま全然本気出してないしっ」


 何故か得意気に胸を張る心愛。萌香は顎に手を当てて考え込んでいる様子だった。


「……いや、それは向こうも同じだろう。曲がりなりにもあの兄さんを相手にあそこまで立ち回ったんだ。並みの者なら最初の一撃で終わっていた」


「そうね。それに亞愛ちゃん、まだなにか隠しているようだったし」


「それは姉さんの勘か?」


「ええ、勘よ」


 確かに、亞愛からは終始余裕が窺えた。まだ隠し玉を持っていたのかもしれないな。頼もしい奴だ。





   †               †               †





「本日はお越し頂きありがとうございます、レイモンド様」


 漆黒のロングコートを羽織った男性の元に向かい頭を下げる。今年で三十になるレイモンド様はオールバックの髪に無精髭を生やした精悍な顔つきをされている。


「おお、千夜くんか。久しぶりだね。また一段と腕を上げたな」


「背も伸びたわね。うん、格好良くなった」


 その妻のアリシア様は胸元に大胆なV字カットを入れた赤色のドレス姿だ。このお二人は出会った当初から何かと目にかけて頂いている。


 レイモンド夫妻の和やかな言葉に笑みを深める。


「そうですか? ありがとうございます。お二人もおかわりな
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ