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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
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プロローグ「俺の名前は朱染千夜」
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たちに被害が及ばないようにしないとな」
「うん。もし花がメチャクチャになっちゃったら、お母さん絶対怒る……」
「それは、勘弁だな……」
普段は温厚なアカーシャだが、一度だけ怒ったところを見たことがあった。心愛と萌香が遊んでいると不注意で花瓶を割ってしまったのだ。当時お気に入りの花瓶にお気に入りの花を活けていたアカーシャは仮面のような笑顔を貼り付け、両者にオシオキを施したのだった。あの時のアカーシャは身も凍るような気配だったと記憶している。
「さあ、どこからでもかかって来な」
「今度こそは一本取って見せるんだから!」
ハルバードを振り上げて突進してくる心愛。千夜は一歩下がることで回避するとハルバードの柄を掴み引き込みながら足を引っ掛けて投げ飛ばした。
「きゃんっ」
「馬鹿正直に突っ込んできても、相手の思うつぼだぞ。相手に攻撃を悟らせるな。動きを悟らせるな。実と虚を織り交ぜて初動を隠せ」
起き上がる心愛にハルバードを返し、再び距離を取る。
「こっのぉ〜!」
今度は低姿勢でジグザグで突貫してきた心愛は下段から斜め上方に掛けてハルバードを振るうと同時に足払いを掛けてきた。
跳び退くことで回避すると転身した心愛の後ろ回し蹴りが飛んでくる。
「おっと」
しゃがみ込んで避けると頭上を通過する蹴り足を掴み、そのまま投げ飛ばした。
「あいたっ」
足をハの字にして腰を擦る彼女は涙目で俺を睨んでくる。
「む〜っ、手加減してよ!」
「いやいや、この上なくしてるぞ? 俺が本気だったら、お前は今頃十五回は死んでるからな」
その言葉は事実であった。現にそれ以上の隙をこの手合せの間に千夜はカウントしていたのだから。
「う〜……千夜って記憶がないのよね。なのになんでそんなに強いのよ」
「それは俺が知りたいわ。なんというか、頭じゃなくて身体が覚えているんだよ。意識しなくても勝手に動くって言うのかな」
「ふーん、もしかしたらそこに千夜の記憶の鍵があるのかもしれないわね」
「かもな」
「千夜ー!」
苦笑して答えると後方から萌香の声が聞こえてきた。
「萌香」
「お姉さま!」
「父さんが呼んでいたぞ――って、なんでココアがここにいるんだ?」
心愛を見た途端、むっと不機嫌になる萌香。対して心愛はふふん、と得意気に胸を張った。
「それはもちろん、お兄さまに稽古をつけてもらっていたのよ。お兄さまは人間だけどすご〜く強いから、お兄さまの教えを受けてればお姉さまなんかあっという間に追い抜いちゃうん
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