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ヴァレンタインから一週間
第3話  人魚姫のルーン
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も語り掛けてくれる事は有りませんでした。

「そうしたら、今日は、これで家の方に帰らせて貰うな」

 少し、在らぬ方向に視線を逸らしながら、そう長門有希に告げる俺。それに、改めて感じたのは、彼女との距離が近すぎる位置に居る事と、彼女の……精緻な人形の如き美貌。
 流石に、くちびると、目蓋に感じた、彼女の薄いくちびるを意識して仕舞いましたから。

 まして、これ以上、この部屋に留まる理由も有りませんしね。
 俺の腕時計は意味を為さない時間を指しています。しかし、先ほど、彼女が教えてくれた時間からさほど時間が経過していないので、おそらくは今日と明日の狭間ぐらいの時間だと思います。
 もっとも、俺の家族と言えるのは、俺の仙術の師匠だけですので……。

 俺の言葉に、少し驚いたような気を発する長門有希。しかし、その理由が良く判らないのですが。

 彼女と契約を交わしてから移動せずに居た、彼女の傍らから立ち上がる。そして、最初に俺が居た場所。つまり、長門有希の座る一辺の対面側に逆さに向けて置いたままに成っていた靴を右手に取り、彼女の方へと向き直った。

「俺は、この部屋に放り出される直前までは徳島に居たんや。
 そして、俺には転移魔法が有る。この魔法を使用したら、徳島に有る俺の家まで、ほぼタイムラグなしに移動する事が出来る」

 この魔法に関しては、実際にはどれぐらいの時間が掛かっているのか判らないけど、それでも、ほぼ瞬間移動に等しい魔法だと思って貰って間違い有りません。
 西宮から徳島間の距離など、俺に取っては無いに等しい距離ですからね。

「せやから、明日の学校の授業が終わったら、その足でここにやって来る。その時に長門さんの造物主との連絡がついていたら、その時にこの式神契約を解除するからな」

 俺の言葉に、少し考えた後に首肯く長門。但し、何故か少し陰の気を発しているような気もするのですが……。
 しかし……。

「それは無理よ、シノブ」


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