第3話 人魚姫のルーン
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の左手の甲にルーン文字が刻まれる。確かに、良く判らない事態で有るのは事実ですが、最初から、俺が徳島から西宮に飛ばされていますし、その際に時間移動も行っています。これは、普通……科学的な事象に起因する事件とは違うでしょう。
「日本語に翻訳すると、人魚姫と記載されている」
長門有希と名乗った少女が、ひとつ小さく首肯いた後に、彼女に相応しい口調と雰囲気で、そう答える。
但し、その内容は、俺に取っては、彼女の未来に横たわる不吉な影を想像させる内容で有ったのですが……。
確か、ルーン文字はアルファベットに置き換える事が可能だったはずですから、どのような内容でも刻む事は可能ですか。
そうして、人魚姫の文字。
もし、彼女の左手の甲に刻まれた人魚姫の文字が、有名な……世界で一番知られている人魚姫の物語と同じ意味ならば、この目の前の少女の運命は、光りの泡となって消えて仕舞う、と言う運命が有ると言う事なのでしょうか。
「人魚姫。つまり、水の精霊王アリトンの娘と言う事なんやろうな。
水の精霊はヘブライ神族に嫌われたから、昔話でも貶められて、王子の魂を得られなければ泡となって消える、と言う結末を与えられた」
俺の呟きに等しいその小さな声が、殺風景な部屋の壁に反射され、そして、自らの声とは思えない程の不吉な余韻と共に、俺の元へと戻って来た。
しかし、長門有希と名乗った少女は、ただ俺を見つめるのみ。
もし、彼女を救う為に行った式神契約が、彼女の未来に黒き雲を呼びこんだのだとしたら、それは……。
「式神契約は、双方の合意によってのみ解消する事が出来る。もしも、長門さんが望むのなら。
長門さんの未来が不幸に彩られるのなら、解除は出来る」
契約を交わす前に告げた言葉を、再び伝えて置く。そもそも俺は、彼女に不幸をもたらせる為に契約を交わした訳では有りませんから。
長門有希が、その深い湖にも等しい憂いを湛えた瞳の中心に俺を据えた。そして、ゆっくりと三度、その首を横に振る。
そして、
「契約を交わさなければ、わたしは消えるしかなかった」
……と答えてくれました。
まして、それは事実でしょう。確かに、俺に蘇生魔法は存在しますが、人工生命体である彼女には、おそらく無意味。現実界の理からは少し離れた彼女の魂を呼び戻す術を、今の俺は行使する事は出来ませんから。
それならば、ここでは、これで良い……とすべきですか。やや嘆息混じりにそう考える俺。それに、彼女の創造主との交信が回復したら、その時に俺との式神契約は解消したら良いだけですから。
俺はそう、出来るだけ単純に考え、長門有希と名乗った少女を見つめた。
感情を表す事のない表情。そして、メガネ越しの所為なのか、彼女の瞳もまた、何
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