第3話 人魚姫のルーン
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』の一文字。
そうして、一瞬の後、その光の珠が消え、俺の右手に顕われる一振りの日本刀。
黒拵えの鞘に収められ、優美な反りを持つその刀を持ち、彼女の傍らに歩み寄る。
長門の傍ら。両手を使えば、簡単に彼女の華奢なその身体を抱きしめられる位置に膝立ちとなり、頭ひとつ分以上高い位置から彼女を見つめる俺。
長門有希と名乗った少女も、メガネ越しの、少し冷たい雰囲気の有る視線で、やや上目使いに俺を真っ直ぐに見つめ返す。
そして、二人の視線が絡まった後の……奇妙な空白。
…………?
そう言えば、この娘は……。
俺は、そっと長門のメガネを外してやった。
その瞬間。メガネを外された長門有希と言う名前の少女の、完成された冷たい印象の有る美貌に、少し……いや、かなり気圧される俺。
そして、それと同時に、上目使いに俺を見つめながら、やや意味不明と言う気を発する彼女。
成るほど。矢張り、この娘は知らなかったのでしょう。彼女が産まれてから、どれぐらいの時間を経ているのか判らないのですが、今まで交わして来た彼女との会話から考えると、あまり人間と関わって来た雰囲気は有りませんでしたから。
それに、もし、ここに居る事が彼女の仕事ならば、他の人間との接触は少なくても当然ですから。
「くちづけを交わす時に、メガネが顔に当たったら恥ずかしいからな。流石に、俺はキスに慣れている訳ではないから」
壊れ物を扱うように、彼女のメガネをコタツの上に置いてから、少し笑い……自嘲的に笑いながら、疑問符に彩られた気を発して居る長門に対してそう答える俺。
但し、先ほどの台詞の中には多少の欺瞞が含まれています。
それは、キスに慣れていない、と言う部分。
そもそも、慣れているも何も、生まれて初めてのくちづけでは、慣れているも何もない。
一応、先ほどの台詞の意味は、見栄が半分、彼女に気を使わせない事が半分と言う感じですか。
長門が俺を見つめたまま、コクリとひとつ首肯いてくれる。
その、彼女に相応しい仕草を瞳に映してから、現界させたままに成っている七星の宝刀を抜き放つ。
蛍光灯の明かりを反射して、銀の煌めきを放つ宝刀。
その宝刀により、素早く自らの指先を傷付け、
「それとな。出来る事なら、くちづけを交わす前には、瞳を閉じて欲しい。
流石に、じっと見つめられると、照れて仕舞うから」
☆★☆★☆
突然の激痛に、思わず左目を閉じ、痛みの元を押さえる為に当てた自らの指先に、ぬるりとした嫌な感触と、ヤケに鉄臭い液体が俺の手を伝ってフローリングの床に赤い水溜まりを作り上げる。
鮮血?
突如、流れ始めた血涙……。いや、これはそんな生易しい流れ
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