第3話 人魚姫のルーン
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「了承した」
短い、しかし、彼女に相応しい答えの後、微かに首肯く長門有希。
その彼女からは、先ほどまでとは違う雰囲気。そう、諦観が少なくなり、少し未来を目指そうとするかのような雰囲気を発し始めている。
なるほど。矢張り、彼女自身が自らの生命の維持を諦めつつ有ったと言う事ですか。確かに、造物主や、自らのバック・アップとの連絡が途絶して、しかも、自分に残された時間が少ない事が判ったのなら、大抵の存在ならば諦観と寂寥に包まれますか。
但し、これから先の行為に関しては、俺の方に多少の問題が……。
「ただ、俺は受肉した存在と契約を行うのは初めてで、しかも、その方法に多少の問題が有る。その契約方法を受け入れて貰えない限り、この話は無かった事に成る。それは理解して欲しい」
俺のその言葉に、少し考える雰囲気の長門有希。しかし、直ぐにコクリとひとつ首肯いて肯定を示す。
そうして、
「わたしに身体的な危害を加えないのなら問題ない」
……と、真っ直ぐに俺を見つめたままで続けて来た。そして、その言葉と同時に、その感情を示す事の無かった彼女の瞳に、やや希望に近い色を浮かべているように俺には感じられる。
「少なくとも、身体的な危害を加える事はない」
俺も、彼女と同じように、ひとつ首肯いて答えと為す。
そして、それからひとつ大きく息を吐き出す事によって、俺自身の覚悟を完了。
「その契約を交わす方法とは、俺の血液を触媒にしてくちづけを交わす事。
当然、くちづけの中に含まれている、誓約と言う部分を呪的に利用する事になる」
そうして、俺の受肉した存在に対する契約方法の説明を行った。
そう。これが、俺が彼女との契約を躊躇う理由。
確かに、生命を失う事に比べたら、好きでも無い相手とでもくちづけを交わす方がマシだとは思うのですが、矢張り、それでも彼女の見た目が美少女姿で有る以上、かなり怯む部分と成っているのは事実。
せめて、彼女の姿形が美少女ではなく小動物系なら、ここまで躊躇う理由はないのですが……。
「問題ない」
しかし、まったく気にした風もなく、そう答える長門。確かに、彼女は造られた存在のようですから、普通の少女とは考え方が違う可能性も有りますか。
まして、自らの生命との両天秤でも有ります。
彼女が受け入れてくれたのならば問題はないか……。
そう無理矢理に思い込んだ後に、龍種専用の宝貝の如意宝珠を起動させる。
手の平を上にした形で差し出された俺の右手から、すぅっと浮かび上がり、大体上空三十センチメートルぐらいの高さを滞空する、直径五センチメートルぐらいの光の珠。
その白く、そして、淡く光る珠の内に見える『護
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