第4章 聖痕
第44話 水の精霊
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を使った首飾りと、青玉らしき宝石を使ったブローチで胸を飾る。そして、左手の薬指にはシンプルなプラチナ製と思しき指輪が嵌められていた。
左手の薬指に指輪を嵌めていると言う事は、彼女は……。いや、悪魔や神霊、精霊の間には、指輪を贈る事によって婚約を示すようなそんな風習は有りません。有るとするのなら、それは、彼女には生命を賭けた約束が有ると言う事。その誓いを示す為に、左手の薬指に誓約のリングを嵌めている可能性は有ります。
それで、身長はタバサよりも少し高いと言う雰囲気。髪の毛は、幻想世界の住人に相応しい紫色の髪の毛。彼女もまた、短い目のボブカットですか。毛先が整っていないのもタバサに似ています。但し、全体的にクセの有る髪の毛の質なのか、先に行くに従って跳ねたように成っていて、少し纏まっていない雰囲気が有りますか。
顔の造作もまた、タバサにかなり似ているな。彼女に良く似た、透明な表情を浮かべた、硬質な、より冷たい雰囲気の有る美少女と言う感じですか。
そして、何より異質なのは、彼女から感じる雰囲気が、生者ではなく水のイメージ。深い森の奥に広がる清浄な湖と接した際に感じる気、とでも表現したら良いでしょう。
あの崇拝される者ブリギッドが炎の精霊ならば、彼女は水の精霊。
いや、水の精霊王アリトンが、俺に親しみ易いタバサの姿形を模して顕われたと考えた方が妥当ですか。
そう言えば、モンモランシーの家の傍には、ラグドリアン湖と言う地球世界には存在しない湖が有って、其処には、湖の精霊と呼ばれる存在が棲んで居る、と言う話をタバサに聞いていましたね。
そして、この湖のガリア側に存在する領地が、タバサの実家。オルレアン大公領だった地域に成るはずですか。
「俺に出来る事ならばな」
俺は、いともあっさりと了承を意味する言葉を口にする。
確かに誰を救い出すのかは判りませんが、俺が呼び出されたと言う事は、今回の依頼も、俺に関係する人物を救い出す事が目的なのでしょう。
まして、俺が了承しない限り、この夢の空間からの帰還は不可能でしょうしね。
俺を真っ直ぐに見つめる、その水の精霊らしき少女。そんなひとつひとつの仕草も、タバサに良く似ている。
そして、
「跪いて欲しい」
……涼やかな瞳で俺をしばらく見つめた後、ひっそりと彼女はそう告げて来る。
これだけの美貌を持っているのに、何故、彼女は……。いや、もし、彼女が、このハルケギニア世界に於ける水の精霊王アリトンならば、創世戦争の際にヤーヴェに敗れた後、彼女は何処となく冷たい感じのする性格になって仕舞ったと地球世界の伝承では伝えられていましたか。
……と言う事は、俺の知って居るその伝承に近い姿形で顕われている可能性が高いと言う事なのでしょう。
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