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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第44話 水の精霊
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か」

 ならば、こちらに来てからずっとそうで有ったように、そうサラマンダーに依頼する。それに、ここは科学に支配された世界ではない以上、夜の闇を退けるには魔法に頼るのが一番簡単ですから。

 その一瞬の後、モンモランシー家の屋敷の客間は、魔法の明かりに支配された世界から、窓から差し込まれる月の明かりのみが支配する世界へと変化する。

「おやすみ」

 普段通りの挨拶に、紅いフレームの伊達メガネを外した素顔のままの彼女が、俺をその晴れ渡った冬の氷空に等しい瞳の中心に据える。
 そして、微かに首肯いた。

 これも、眠りに就く前の日常。
 そして、このまま夜の静寂(しじま)に微かに聞こえて来る彼女の吐息を子守唄として、俺は眠りに落ちて行ったのだった。


☆★☆★☆


 少し頭を振った後、ゆっくりと周囲を見回してみる。
 そこは……。淡い蒼と、静寂に沈む世界。

 俺が立っているのはアスファルトにより舗装された道路。左の方向には、外側から見る限りでは有る程度の緑と、等間隔に並ぶ街灯の存在する公園。そして、俺の周りを取り巻いているのは、地球世界に存在する現代風の建物たち。

 ……って言うか、アスファルトの舗装された道路。それに、現代風の建物?

 但し、今見える範囲に広がるその街には、俺と蒼い光り以外には生きて動くモノは一切、存在していない世界で有った。

 そう言えば、ここと似たような世界(場所)は、最近、妙に縁が有りましたか。

 交差点の近く。青白き街灯の明かりが照らす範囲内で、しばし佇む俺。科学が創り上げし無機質にして冷たい明かりを肌で感じながら、この魔法が創り上げたと思しき狂気に彩られた世界を思う。

 そう、確か一度目は、誘いの香炉(いざないのこうろ)により眠らされた時に巻き込まれた、紅き冷たき光りに包まれた世界。
 二度目は、影の国の女王に招かれた、死と風に包まれた静寂の世界。

 そこまで考えてから、思わず、肺に溜まった空気を、笑いに似た吐息と共に吐き出す俺。
 ……やれやれ。今度は、一体、誰に呼び出されたのか。
 地球世界で暮らして来た十六年の間にはそんな経験はなかっただけに、急に、アイドルにでも成ったような気分で、もう笑うしか方法がないでしょう。

 但し、俺が呼び出される先は伝説の木の下や放課後の屋上などの、青春時代の浪漫溢れる場所などではなく、夢の世界。呼び出す相手は、魔法学院の女生徒などではなく、神様のみ、なのですが。
 これならば、放課後の体育館裏に呼び出される方が、余程マシなような気もするのですが。

 少なくとも、不良相手なら、命懸けで相対すような事態に陥る事はないですからね。

 再び、周囲をゆっくりと見回してみる。
 但し、今回は自
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