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NARUTO 桃風伝小話集
その11
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した。
温かくて優しくて、どこか甘くて柔らかい匂いが、一度だけ抱かれる事のできたお母さんの胸を思い出させる。
止められない涙がさらに増えて、どうにもこうにも制御できなくなってしまってました。

「辛かったわね。一人で苦しかったわね。ごめんなさいね。ずっと気付いてあげられなくて」

きつく私を抱き締めて、ミコトさんが私に謝る。
ずっと昔に私の中で閉じ込められた何かが溶け出して行くのを感じる。
ミコトさんのせいじゃないと言いたいのに、嗚咽で言葉にならない。
必死に首を振る。
でも、それでミコトさんには通じたらしい。

「これからは私達がいるから。私達がクシナとミナト君の替わりに守ってあげるわ。安心して良いのよ。ねえ?あなた」
「あ?あ、ああ」

戸惑ったようなフガクさんの声に、私は我に返る。
いつの間にか、ミコトさんにしがみついてしまっていた事に気付いて、恥ずかしくなった。

「あっ、あの!ごめんなさい!!私っ」

咄嗟に素の言葉使いになりかけてしまったけれど、勢いで誤魔化す事にした。

「こんなの初めてで、嬉しくなってしまいました。突然泣き出したりなんかしてごめんなさい。もう大丈夫です」

ミコトさんの腕の中から抜けだし、涙を拭う。
ぽかんとして私を見つめているサスケ君の視線が痛い。
格好悪い所を見られてばつが悪かった。
だって、こんな、子供みたいに泣きじゃくった事なんて、三代目の前以外ではなかったのに。

「そう。なら、ご飯を食べれるわね。気に入ったのならいつでも食べにいらっしゃい」

ミコトさんはこう言ってくれるけれど。
でも。

思わず私はフガクさんの表情を伺っていた。

「勿論誰も文句を言う人なんか家にはいませんとも。ねえ、あなた?」

ミコトさんの怖い笑顔がフガクさんに向けられます。

「う、うむ」

何だか焦ったようなフガクさんがこくこくと頷きました。
ニコニコと笑うミコトさんがとても綺麗なのに怖い人に見えました。
ミコトさんがとても怖いので、大人しくしてますが、多分私とフガクさんは仲良く出来ません。
だって、フガクさんは私を殴りつけた事のある人間ですから。
だらだらと冷や汗を流すフガクさんを眺めていた私は、ミコトさんに声をかけられた。

「ナルト君?どうしたの?遠慮せずにおあがりなさい」

綺麗で、とても優しい笑顔です。
サスケ君がとってもうらやましいと思いました。
私も、こんなお母さんが欲しかったな。
胸を締め付けられるような寂しさが込み上げてきます。
それを飲み込み、押し殺しながら、私はミコトさんに笑顔で返事を返しました。

「はい」

笑い返してくれるミコトさんの微笑みに、胸がきゅんとなりました。
どうしよう。
もしかした
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