暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
亀裂は不安を呼んで
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
シップの性質的にはこちらの方が合っているのだろう。ならば、この方式を選んだこともあながち間違いではない。

 マサキが半ば無理やりに納得したところで、

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 低く、ドスの利いた声が響いた。直後にその声の発信源と広場中央の間の人混みが真っ二つに割れ、一人の男性プレイヤー(モーゼ)が現れた。とはいえ、その外見は神話とは全く異なり、小柄でがっちりとした体格だ。
 彼は一歩前に出ると、その容貌に見事なまでに一致した濁声をその場に響かせた。

「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」

 突然の乱入者だったが、ディアベルは僅かに表情を崩しただけで、そのプレイヤーを中央に呼び寄せ、名を名乗るように要求した。男もこれに従い、鼻を一つ鳴らすと、噴水の前に立ち、辺りを見回した。

「わいは《キバオウ》ってもんや」

 その言葉が広場を駆け抜けたのと同時に、キバオウと名乗る男の双眸(そうぼう)がギラリと鋭く光り、途端にマサキの右に座っていたトウマが身を震わせた。

「どうかしたか?」
「いや、なんでもない」

 マサキが問うと、トウマは笑って見せたが、その笑みはどこか引きつっていた。
 マサキがその意味を推察しようとすると、広場中央からいくつかの怒鳴り声が聞こえてきて、マサキはそちらに視線を戻す。中央では、キバオウが元βテスターを糾弾する持論を展開しようとしていたところだった。

 ――彼の言い分はこうだ。
 βテスターはこのSAOがデスゲームと化した途端、はじまりの街で右往左往していた初心者たちを見捨て、自分たちだけが強くなろうとした。
 そしてその結果、このゲームのことをよく知らないプレイヤーが死に至った。
 だから、この場にいるβテスターは責任を取って謝罪と賠償を行え。

「…………」

 その支離滅裂な理論に、マサキは溜息しか出なかった。彼はプレイヤーが死んだ原因をβテスターに押し付け、現実逃避しているに過ぎない。彼に何かがあったのか、またはそれが彼の元からの考えなのかは知らないが、それをβテスターのせいだと断定して一方的に糾弾するのは、ただの負け犬の遠吠えと変わらないではないか。それに、“プレイヤー全員で情報と利益を共有しよう”などといった考えは、“リソースの奪い合い”というこの世界の原則を真っ向から否定している。そしてそれは、物理法則とシステムによって管理されているこの世界で魔法を使おうとするのと、何ら変わらない。つまり、不可能だということだ。

 マサキが右ひじを右足に乗せて頬杖を突きながら冷たい目でキバオウを眺めていると、穏やかな声と共に、長身のシルエットが姿を現した。チョコレート色のスキンヘッドや屈強な体格は日本人離れしていて、マサキ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ