アインクラッド 前編
亀裂は不安を呼んで
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らないほどに爽やかな空気が、呼吸によって取り入れられる。――正確には、そのように感じる、あるいは錯覚する。
その爽やかさと危険な迷宮区を抜けたと言う安心感から伸びを一つしたトウマを横目で見つつ歩き出そうとしたところで、マサキの眼前にメールが表示された。差出人はアルゴ。二人が初日に出会った情報屋だ。
文は極めて短く、指でウインドウをスクロールさせることもなく読了した。マサキがウインドウを閉じると、すかさずトウマが尋ねてくる。
「何だったんだ?」
「……どうやら、お前の剣を選ぶのは後回しになりそうだ」
「えー!? 何で?」
「あれが午後4時からに決まったらしい。……ほら、行くぞ」
明らかに不満そうな顔をするトウマに言い放ち、マサキは歩き出す。トウマはまだ不服そうな表情を覗かせていたが、それなりの理由があるのだろうと察し、黙ってマサキの後を追いかけたのだった。
マサキたちが迷宮区から南に歩き始めてしばし経った頃、二人は迷宮区に最も近い谷あいの町、《トールバーナ》に到着した。巨大な風車塔が立ち並び、谷間を吹きぬける風が風車の羽をゆっくり回転させていく風景がそこかしこで見られる、のどかな田舎町だ。
二人が北門をくぐると、眼前に《INNER EREA》の文字が表示され、その瞬間、トウマが安堵の溜息をついた。マサキも右手を左肩に当て、首を左右にコキコキと折る。門から街の中央を目指して歩き始めたところで、マサキの目は右側の路地に金褐色の巻き毛を捉えた。
「マー坊とトー助、遅かったじゃないカ」
「何だ? その呼び名は。俺は二人合わせて発動機製造会社になるつもりはないし、君と僕とで天気予報をするつもりもないんだが」
「こいつはオイラの癖みたいなもんサ。オイラが呼びやすいからこう呼んでるだけダ。気にしないでくレ」
「変な癖はその髪の毛ぐらいにしておいてほしいもんだ」
「にゃはは、全くだナ」
金褐色の巻き毛を揺らしながらふてぶてしく笑うアルゴに、マサキは溜息を一つついて続ける。
「……で、アルゴ。お前は出迎えか?」
マサキが言葉をかけると、アルゴは特徴的な三本線のペイントの下にある唇を不敵に歪めて言った。
「二人はオイラが認めた金の卵だからナ〜。死なないようにしっかり面倒見ないといけないだロ?」
「……そりゃどうも。……まあ、だったらもっと速く情報を送ってほしかったが」
情報とは、この町で約一時間後に開かれる第一層フロアボス攻略会議のことだ。マサキがメールでアルゴに情報が手に入り次第知らせてくれるように依頼していたのだ。――ちなみに、代金の200コルは前払いである。
マサキがそう言うと、アルゴは珍しく悪びれた声を響かせた。
「あー、そいつは悪かったヨ。こっちもイロイロ忙しくてネ
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