Mission
Mission6 パンドラ
(8) ニ・アケリア村 参道入口前
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「なかなかに見応えのあるショーだったぜ。イバル君にユースティア君に――ユリウス?」
「リドウさん! 何でここに」
ノーマルエージェントを数名引き連れたリドウが立っていた。
「だって俺、分史対策室室長だから。――お前が弟のこと以外で声を荒げるの、初めて見せてもらったぜ、『元』室長。貴重なシーンありがとさん」
ユリウスは隠しもせず舌打ちした。あの、マナーにはうるさいユリウスが。よほどリドウを嫌っているらしい。
だが、それ以上に、ルドガーの心には引っかかるものがあった。
(そういえば、兄さんが俺の前でこの手のマイナス感情を出すの、もう何年も見てない。引き取られたばっかの頃は、むしろ分かりやすいくらい喜怒哀楽があったのに。いつからだ。いつから兄さんは俺に本心を曝け出さなくなった? いつから兄さんは俺に心を見せなくなった?)
「お前に見せるためにやったわけじゃない」
「――そのスカした態度が気に入らないんだよ」
リドウは聴こえないよう言ったつもりだろうが、ルドガーは立ち位置のせいかしっかり聞き取れた。
「さて、ルドガー君。回収した『道標』を提出してくれ。以後、分史対策室で厳重に保管する」
個人的にはいけ好かない男だが、エージェントたるルドガーにとってリドウは上司だ。
ルドガーはリドウの前まで歩いて行き、ポケットから「道標」を出してリドウに手渡した。リドウはノーマルエージェントが開けたアタッシュケースに、白金の歯車の集合体を収めた。
「確かに。初任務ご苦労さん、新人君」
「――ありがとうございます、室長」
「で、だ。せっかく一仕事終えたところ悪いが、もう一つ任務を与える。――エージェント・ルドガー。分史対策室前室長ユリウスを捕縛しろ」
ルドガーは反射的にリドウを見返していた。リドウはニヤニヤするばかり。
分かっている。この男は分かった上で、兄弟で捕物の茶番を演じさせようとしている――!
ユリウスが行方を眩ましたのは、ルドガーと離れることでルドガーの目を一族から遠ざけるため。ルドガーを想っての行いだ。だから列車テロの首謀者だと報じられても、釈明一つせず逃げ回る――そう、手紙には書いてあった。
(結局、全部裏目に出て、俺はクルスニク一族の一員になった。もう兄さんが姿を隠す意味はない。警察に連行されるユリウスなんて見たくない。いっそ俺の手で……)
天秤はほとんどリドウの命令を聞く側に傾いていた。
「悲しいなあ、ユリウス。まさかエージェントになった弟にお縄を頂戴するハメになるなんて。せっかくルドガー君を入社試験で不合格にしたのになァ?」
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