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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十三話 前途多難
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呟く様な口調だな。どうやら気付いていなかったらしい。戦争は膨大な資源を消費する。軍事産業にとってはこれくらい旨味の有るビジネスは無い。そしてそれが百五十年続いてきた。おそらく軍事産業は戦争有りきのビジネススタイルになっている。和平なんて事になったらお先真っ暗だろう。そしてその事を怖れている。

シトレ達は戦争の中で生まれ育った。だからその辺りの感覚が鈍いのだ、これが常態だと思っている。戦争終結後の経済振興政策が必要だな、多くの軍人を民間に戻す事になるから受け皿も必要だ。公共事業による惑星開発か……。レベロはどう考えているかな、その辺りを考えておかないと失業者があふれる事になる。ハイネセンに戻ったら相談して見るか……。いかんな、今は話に専念しないと。

「彼らにしてみれば帝国に対して、或いはフェザーンに対して一大軍事攻勢をかける機会でしょう。武勲は挙げ放題、物資、兵器は売り放題ですよ。その機会を失おうとしているんです」
『我慢出来んだろうな』
シトレが溜息を吐いた。そんな顔をするな、こっちまで滅入ってくるじゃないか。

「それを防ぐために事更に主戦論を唱える可能性が有ります。おそらくはフェザーン侵攻でしょう。対地球教対策の一環として唱えやすい、経済的な利益も有る。フェザーンを得れば目の前に有るのは帝国領です」

『地球教の根拠地の一つであるフェザーンを潰した以上、問題は無い。後は帝国を倒せば良い……。そう言う事だな』
「そう言う事です」
目の前でシトレが“うーん”と唸っている。

『どうすれば良いかな。貴官がそこまで考えている以上、なんらかの対策が有るのだろう』
俺ばっかり頼るんじゃない、俺は魔法の壺を持っているわけじゃないぞ。まあ原作知識ってのはそれに近いものが有るかもしれないがな……。

「バグダッシュ准将に地球教、それと連中と親しかった憂国騎士団を調べさせて有ります。そこに出入りしていた人間もです。もうすぐそちらに情報が届きます。片っ端から憲兵隊に取り調べさせるんですね。そしてそれをマスコミに流す……」
『主戦派の中に地球教の手先が居る……、そういうことだな』

「そういう事です。現状ではそれくらいしか手が有りません。後はトリューニヒト委員長にフェザーンの件は帝国との調整が必要、そう言って貰うしかないと思います」
『そうだな』
なんとも貧弱な手だな、溜息が出そうだ。

「それと、最高評議会議長のポストが必要ですね」
俺の言葉にシトレの視線が厳しくなった。声を顰めて話しかけてきた、囁く様な口調だ。
『何時かな、それは』

「帝国に和平の意志あり、そう確信できた時です。或いは帝国が崩壊すると確信できた時」
『つまり戦争をやめるか、戦争を止めるかがはっきりした時だな』
「ええ、そういう事になりま
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