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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十三話 前途多難
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ダッシュ准将が誰かと内緒話を始めたと聞いたのでね。……誰と話をしていたのかな」

おいおい、顔が引き攣っているぞ、そんな怖い顔をするな、ザックス。それにしても誰がこいつに注進した? スパイは俺の傍近くに居るようだな……。まさかとは思うが俺の部下か? 可能性はあるな……。ここはとりあえず能天気に明るく行くか。

「もちろんヴァレンシュタイン中将さ」
「……」
「お前さんの言うとおり、思いっきり文句を言ってやったぞ。俺の立場も考えてくれってな」
今度は胡散臭そうな顔か、白々しかったかな。

「そんな声は聞こえなかったがな」
「そりゃあ防音壁だからな、聞こえないのも仕方ないさ」
大丈夫、今お土産をやるからな、ザックス。とびっきりのお土産だ、飛び上がって喜ぶぞ。

「ヴァレンシュタイン中将が調査課の人間と話をしても良いと言ってたぞ」
「本当か?」
「ああ、本当だ。調査課の協力が欲しいようだな。ギブ・アンド・テイク、良い機会じゃないか。色々と訊いたら良いさ」
「なるほど……」

考え込んでいるな、ザックス。もっと素直に喜べよ。
「どうだ、ザックス。俺は良い友人だろう。何と言っても俺とお前さんは士官学校で同期生だったんだからな」
「……そういう事も有ったな、今思い出したよ」
「……有難う、思い出してくれて……」
昔はもっと素直だったんだがな、俺もお前も……。



宇宙歴 795年 9月24日    第一特設艦隊旗艦 ハトホル エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



バグダッシュとの話は終わった、大体予想通りだ。これから和平を進めるにあたって邪魔になるのは主戦派だろう。この機会に出来るだけ叩いておいた方が良い。もう少しで地球教にしてやられるところだった、それを強調することだ。主戦派を復活させてはいけない。

明日はヤンとワイドボーンを相手にしなくてはならない、厄介だな。まあ嘘を吐いても仕方がないし、嘘が通用する相手でもない。ある程度は正直に話すとするか。責められたらごめんなさいの一手だな。ワイドボーンはともかくヤンは煩く言わないだろう。

ここまでは想定通りかな。帝国との間にパイプを作った。ある程度帝国に対しては和平と言う言葉も印象付けたはずだ。ここから先は帝国がどう動くかによる。ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯か……。どう動くかな、今の所権力争いをしているような形跡は無い。そこまで馬鹿じゃない、そう取って良いのかな。

レムシャイド伯がハイネセンに来るという事は和平を結ぶ意志有りという事かもしれない。表向きは対地球教、裏で和平か……。こちらとしてはそう受け取りたいところだが焦るのは禁物だ。相手の出方をじっくりと見ないと……。考えていても仕方ないな。喰えない狸どもに連絡を入れるか。

『ヴァ
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