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SAO−銀ノ月−
第三十七話
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、そんなことはもはや俺の頭の中にはなく、気だるげに店番をしていたNPCに叩きつけるようにコルを渡すと、とりあえず一番速そうな漆黒の馬に乗りこんだ。

「疾れぇッ!」

 店番NPCが厩舎の入り口を開けると同時に思いっきりムチを叩き、漆黒の馬はいななきながら一陣の風のようにフィールドへと駆け出した。


「どこだ……!?」

 今の自分ならば小虫一匹たりとも見逃すまい、と限界まで気を引き締めながらアリシャ、もしくはそれを追っているであろうPohの姿を捜す……が、影も形も見当たらない。

 万が一の最悪の事態の想像を頭から削除しながら、馬のスピードを更に上げようとしたその時、視界の端にシステムメッセージが移った……これは、メールか。

 こんな時にメールなど読んでいる暇などないと一瞬思ったが、差出人のプレイヤーの名前を見て一瞬で考えを変え、今まで散々走らせていた馬を急停止させる。

 今来たメールは、プレイヤーネーム《アリシャ》からのメールであった。

『いつだかの《カミツレの髪飾り》だけど、可愛かったから返すね、もったいないし! ギルド共用のストレージに入れておいたから! それと、カミツレの花言葉は『逆境に耐える』とか『逆境の中の活力』って意味何だって! ショウキが良く言ってる、『ナイスな展開じゃないか……!』と似てると思わない? ……じゃあね、ショウキ』

 ……という文面のメール。

 ――せっかくあげたっていうのに、もったいないから返すとはどういうことなんだ? それにお前に花言葉とか似合わないし、『じゃあね』って何だよ、まるでお別れみたいじゃないか……

 まさに今、アリシャにどのような危機が迫っているのかは想像がついてしまう……だが、脳はそれを認めない。
震える指でギルド共用のストレージから、アリシャが言ったように本当に入っていた《カミツレの髪飾り》を取りだした。

 そしてそれと同時に、開きっぱなしであったメッセージウィンドウのアリシャの名前の表示が――連絡不能を示す、灰色に変わった。

 いや、アリシャだけではなく……よせばいいのに、その震える指のままでフレンドの一覧を表示すると……クラウドも、ヘルマンも、リディアも、名前の表示がアリシャと同じように連絡不能……いや、この世界だけでなく現実世界においてもログアウト……死んだことを示す表示である灰色となっていた。

 それは即ち――ギルド《COLORS》の、俺以外の全滅を示していた。

「……嘘だろ……」

 走らせる気がない者など乗せる価値がないということか、漆黒の馬が茫然自失となっていた俺を振り落とし、そのまま主街区の方へ去っていってしまうが、それに構っている余裕など今の俺にあろう筈がない。

 《カミツレの髪飾り》を持ってそ
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