Mission
Mission6 パンドラ
(7) 霊山頂上(分史)~ニ・アケリア村 参道側通用門
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ってミラの正面に立った。
「お前の世界は、俺が壊した」
「――は? じゃ、ここはなに」
嘲り混じりに問われても怒りは沸かない。ただミラが痛々しく、ルドガー自身も苦しかった。
「お前のとは違う世界だ」
「意味分かんない……姉さんは!? 元の姉さんに戻るのよね!?」
傍らに来たエルがルドガーとミラをおろおろと見比べる。
ルドガーは拳を固めた。世界を滅ぼしたと打ち明けるより、彼女の最愛の姉が死んだと宣告するほうが、ずっと重い。
「あんたのミュゼは消えたんだ」
「あなたの世界と一緒に」
煮え切らないルドガーを見かねてか、アルヴィンとレイアが、厳しさと憐憫、それぞれの声色で、ミラに事実を突きつけた。
風が一陣、吹いて、去るまでの、間があった。
「……私を騙したのね!」
バラ色の瞳が怒りに燃え上がる。ミラは拳を振りかぶった。
殴られると簡単に予期できた。それでも甘んじて受けるつもりでルドガーは動かなかった。
ミラの拳がルドガーの横っ面に届くことは、なかった。
ユティが後ろからミラにタックルを決めて、ミラを下敷きにしたからだ。
エルが悲鳴を上げた。アルヴィンもレイアも目を丸くしている。押し倒されたミラは、顔を上げると、射殺さんばかりにルドガーを睨んだ。ルドガーは思わず一歩引いた。
硬直した空気を壊したのは、場にいた誰でもなかった。
「どけ、無礼者!!」
どこから下りてきたのか。イバルがいつもの着地ポーズで現れ、すぐさま双剣でユティに斬りかかった。
ユティは、押し倒したままのミラの腰の鞘から剣を抜き、イバルの斬撃を受けた。
イバルは呻き、すぐさま片方の剣を再び攻撃に回す。剣を一本の防御に回しているユティはあえなく胴体を両断される――はずだった。
彼女は、頭上で防いだ剣と、まさに横薙ぎにされている剣、2本の剣の間を『潜り抜けて』避けた。
ユティは地面に手を突き、前転を一回して態勢を立て直した。
さすがのイバルもこれにはあ然としたようで、次の攻め手を出さないまま突っ立っている。
ルドガーも、助けに入るのも忘れてぽかんと彼女を見るしかなかった。
やがてユティが立ち上がった。場の全員がびくりとする。
ユティは自分の手を見下ろして、一言。
「切れた」
「「当たり前だ馬鹿!」」
ようやく立ち直ったルドガーと、後ろにいたユリウスの声が、見事に重なった。
「え、えっと……ユティ、とにかく傷見せてくださいっ」『ギャー! パックリいってるよー!!』
「下側に来たの避けるのに、刀身握ったから、かな」
『そりゃザックリいくよバホー!』
エリーゼとティポが騒ぐ中、イバルもはっと我に帰ってミラに駆け寄っていた。
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