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人狼と雷狼竜
訓練模様と……
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「えへへ。ちょっと気になっていたんだ。ヴォル君ってこういう事はズボラな気がしたんだけど、整っているからね」
「ああ。これはな……」
 ヴォルフは、今の髪型になる前……ユクモへの帰還を受ける直前の事を話し始めた。

 普段、ヴォルフは人里ではなくモンスターが跋扈(ばっこ)する危険地帯を生活の場にしており、基本的に髪は放ったらかしで、邪魔になったら蔓を紐替わりにして括るか大雑把に切るかの何れかだった事。
 服や鎧は加工屋で作成はして貰うも、年単位で人里に近付かないので着たままボロボロなり、今の戦闘服であるユクモの前のは既に修理が効く段階を通り越していたこと。
 体と服を洗う時は川や湖の水を使っていたこと。その度に水辺を行動範囲にしている大型モンスターと一悶着あったこと。
 帰還要請を受諾してこのロックラック地方のタンジア港に着いた時、そこのギルド嬢――――――大きなハンマーを担いだ女性――――――に捕まって有無を言わさずに入浴施設に放り込まれた後に髪を切られた挙句、修理の効かない鎧は売り飛ばされてその代金でユクモ装備を勝手に購入されたこと。

「そんな訳でこの髪型だ。あの女は一体何がやりたかったんだか……」
「あ、あははははは」
 神無はヴォルフの話を聞いて困ったような、呆れたような、そんな笑顔を浮かべていた。
「その人はね……多分、その時のヴォル君の格好が嫌だったんだと思うよ」
「?」
 ヴォルフは意味が分からない、と首を傾げた。
「ヴォル君は綺麗な顔してて、カッコイイんだよ。それなのに、汚い格好をしていたんでしょ? それは嫌だよ。折角のいい男が台無しだもん。私も多分、同じ事してたと思うな。……その前に村長さんかお姉ちゃんが怒ってたかもだけどね」
「そういうものなのか?」
「そういうものなの!」
「……?」
 ヴォルフの問いに神無は力強く答えるが、当の本人は理解出来ていなかった。
「私ね……ヴォル君が生きてるって聞いた時、凄く嬉しかったんだよ。村の皆も喜んでた」
 神無は、それから今までにあった事を話し始めた。
 ヴォルフが上級ハンターになった知らせを受けてすぐに帰還要請を出したが、当時のヴォルフが居た所は海の向こうの遥か彼方で、挙句にヴォルフはその時から滅多に人里に姿を現さない為その要請が届くかどうかはかなり疑問視されていたこと。届いても年単位で時間が掛かること。
 それで、当時既にやる気を出してハンター候補となっていた小冬に合流する形でハンターになった事。
 同じハンターになればいつの日か出会う日が来るかもしれないという思いが、自分達を支えて今に至った事を。
「……現実は甘くなかったけどね」
「そうだな」
 現実はいつも厳しい。それは自然界に身を置いていたヴォルフは嫌というほどよく知っている。そ
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