訓練模様と……
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と周囲を見渡した。今日はそろそろ終わりにする事にする。
「今日はここまで」
ヴォルフの言葉に皆は武器を降ろした。
深呼吸をしたり、井戸に水を汲み言ったり、手拭いで汗を拭いたり、それぞれが疲れを取ろうとしている中、ヴォルフは太刀の納まっていない鞘を持ったまま、椿がハンマーで殴っていた大岩に近付いていく。
「正太郎」
ヴォルフの言葉に、呼ばれた正太郎だけでなく、他の面々もヴォルフを見る。
「よく見ておけ。槍使いには必須ともいえる技だ」
ヴォルフはそう言いながら鞘の先端を岩に押し当てた。
そして鈍い破砕音と共に鉄製の鞘が岩に20cm程突き刺さった。
『えっ!?』
「……嘘だろ?」
全員の顔が驚愕の表情を浮かべ、正太郎は唖然としていた。
「踏み込みと共に全身の筋力と体重を集中させる技だ。使いこなしてみろ」
「……ああ。使いこなし……たいな」
絶句している皆を尻目にヴォルフは岩から鞘を引き抜くと、地面に刺さったままだった太刀を収めた。
「解散する」
ヴォルフはそう言うと休憩所へ向かって歩き始める。
「ヴォル君。あれ、私にも出来るかな?」
ヴォルフに追いついてきた神無が、遠慮がちに尋ねて来る。
「訓練次第だ。無理に習得する必要は無い」
「……私もやってみるよ」
「いきなり試すな。腕を痛める」
神無の答えにヴォルフは立ち止まらずに答える。
「うん。頑張るよ」
「なら、やってみるといい」
ヴォルフはそう言うと、休憩室の男子更衣室に入って行った。
着替えを終えたヴォルフは訓練所を見渡していた。既に日が傾き掛けており、茜色の光が大地を染めようとしている。
今日は少し動いたが、刀を振るう度に痛みが走った。まだ体が治っていない事の証拠だ。
なんにせよ、この痛みが引かなければジンオウガの相手どころか、狩りに行く事も自殺行為になってしまう。
ジンオウガ……あの牙竜を思い出すと共に何かが脳裏に引っ掛かるのを感じる。
……あの牙竜とは初対面ではない気がするのは確かだ。
「ヴォル君?」
不意に聞こえた声に振り返ると、花模様が描かれた着物に着替えた神無が立っていた。
「どうしたの? 考え事?」
「……まぁ、そんなところだ」
「そうなんだ」
神無はそう言うと、近くにあった休憩用の椅子に使われている丸太の一つに近づいて、そこを軽く叩いた。
「座って?」
自分が座れば良いのではないか? と思ったヴォルフだが、何か意味があるから彼女がそんな事を言ったのだと思い直し、素直に従うことにする。
「これで良いのか?」
「うん」
神無は嬉しそうに言うと、ヴォルフの背後に回って髪に手を伸ばした。
「わぁ。やっぱりキレイな髪してるね。サラサラだよ」
「……何をしているんだ?」
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