第47話
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風斬氷華は通路を少し走っていると、顔面の半分、左腕、左の脇腹にそれぞれ灼熱で溶けた鉄を流し込まれたような激痛が襲いかかり足が止まり立っている事もできなくなり冷たい地面に倒れ込んだ。
常人ならば死んでもおかしくないほどの痛覚情報を叩きつけられながら、死への逃避すらも許されない。
生き地獄とはまさにこの事だった。
だが、次の瞬間には恐るべき変化が起こった。
ぐじゅり、とゼリーが崩れるような音と共に傷口が塞がり始めたのだ。
まるでビデオの早送りのように、人間ではありえない速度で、あっという間に空洞が修復される。
発狂するほどの激痛が熱が冷めるように引いていく。
生きていてはおかしいはずなのに。
肌だけではなく、吹き飛ばされたはずのメガネや、破れたはずの衣服の端々が、ゆっくりとした動きでじわじわと元に戻っていく。
「あ、ああ・・・・っ!」
痛みが引いていくと同時に、それまで考える余裕すらなかった頭が、思い出したようなに思考を再開させてしまう。
自分の身体の中は、空っぽだったという事実が。
普通だと思っていた自分の正体が、異常な存在だったという真実が。
そんな風斬の絶望に引き寄せられるように、さらなる絶望が現れる。
ズシン!!という地下街全体を揺るがす震動。
風斬は暗闇の先へ目を向ける。
そこに、鉄とコンクリートで固めた、歪な化け物がいた。
その化け物の後ろには、さらに恐ろしい金髪の女が立っている。
風斬は、あの化け物の大木のような腕で殴り飛ばされた激痛を思い出して、反射的に逃げ出そうとしたが恐怖と焦りのあまり、思うように足を動かせない。
対して、女は何も告げない。
無言で白いチョークのようなオイルパステルを振うだけで、石像は風斬の背中を狙って拳を放つ。
風斬はとっさに地面に伏せて避けようとしたが、一歩遅れてなびいた長い髪が石像の拳に引っ掛かる。
まるで頭皮を丸ごと引き剥がすような激痛と共に、彼女の身体は砲弾の様に飛ばされる。
「げう!!」
ゴンギン!!、と風斬の身体の中で凄まじい音が鳴り響く。
恐るべき勢いを借りて地面を滑った風斬は、まるで巨大なヤスリに全身を削られたような痛みに襲われた。
「あ、あ、あ・・・・ッ!!」
地面に何メートルもの長さにわたって強引に剥がされた皮膚の破片や長い髪の毛などが一直線に走った。
ぐずぐずと、風斬の顔から異音が聞こえた。
彼女が己の顔を手で触れてみると、顔の表面が不気味に波打っていた。
地面を引きずり回され剥がされた顔の部品が、再び元に戻ろうとしているのだ。
「何なのかしらねぇ、これ。
虚数学区の鍵とか言われてどんなものかと思ってみれば、その正体はこんなもんかよ!
あは、あはは!こんなものを後生大事に抱え込むなんざホントに科学ってのは狂
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