第十八話 犬とアザラシその四
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もそうは思えない程である。何なのかと思ってしまう。
「ああ、残念だがな」
「で、それに噛まれたのね」
「そういうことだ」
「またそれは災難ね」
蝉玉があらためてそれを言う。
「何、大したことはないさ。他にも色々あったしな」
すっと笑って述べる。意外とクールだ。
「フランツの特訓に比べれば命の危険は少なかったさ」
「いや、あれは非常識だし」
ナンがそれに対して言う。
「あんなの普通はしないし」
「そうそう」
「まあな。そういえばフランツは何処だ」
ダンが言う。
「姿が見えないが」
「あれっ、そういえば」
「何処かしら」
他の面々もダンに言われてそれに気付く。
「どうせまた馬鹿やりに行ってるんでしょうけれど」
「まあそうだろうね」
七美とジョンの言葉も身も蓋もない言葉であった。かなり手厳しい。
「けれどそんなの気にすることないんじゃないかな。そんなに」
スターリングは特に慌てることなく皆に述べた。
「いつものことだし」
「御前も穏やかな顔して言うこときついな」
「あれっ、そうかな」
ダンの突っ込みにも今一つ自覚がないようである。スターリングらしいと言えばらしかった。
「まあ確かにな。そのうち戻ってくる」
何だかんだでダンも同じような考えだった。皆彼に関してはかなり達観していた。
「どうせ大騒ぎになるだろうしな」
「騒ぎって作るものなんだ」
彰子はそれを聞いてぽつりと呟く。
「あいつの場合はそうなのよ。どうせ今だって」
「うおおおおおおおおおおっ!」
七美が言った側から外で叫び声が聞こえてくる。
「俺はやる、俺はやるぞ!」
「また何してんだか」
「うちのラッシーよりあれなんだけど」
皆その声を聞いただけで呆れてしまっていた。もう誰も彼を止めるつもりはなかった。そのまま生徒指導室に強制連行されてしまったとしてもだ。
犬とアザラシ 完
2006.11.24
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