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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第四話 迫り来る脅威
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められている棚に寄りかけると、そのままズルズルと冷たい床に膝を着く。

「……ッ……ぅ」

 床に膝を着き、身体を丸め両手を自分の身体に回すアニエス。
 その姿は、まるで内側から飛び出してくる何かを押さえつけようとしているようにも見えた。
 そのまま暫らく時が過ぎ、のろのろと顔を上げたアニエスは、天井近くにぶら下がる一つの明かりに目をやる。いくら光量が少ないからといって、周りが暗い中、突然明かりの発生源を見上げるには、アニエスの目は暗がりに慣れ過ぎていた。光から逃げるように目を閉じると、瞼の裏に過去の記憶が走馬灯のように流れていく。

 アングル地方にある、海に面した村に家族と共に暮らしていた幼い時分。
 砂浜に倒れる、炎を閉じ込めたかのような大きな赤いルビーの指輪を嵌めた美しい女性。 
 ヴィットーリアと名乗ったその女性が、炎に巻かれる姿。
 家族を、村を赤黒く燃え上げる炎。
 自分を背負う、村を燃え滅ぼした男の火傷で引き攣れた醜い首筋。
 ゆっくりと瞼を開く。

 視線の先には、ゆらゆらと揺れる魔法の明かり。
 乱れる呼吸を整えるため、大きく息を吐き出す。 

「〜っふ……は……ぁ……逃げられると……思っているのか……」

 ギリリと歯を食いしばった隙間から、ドロドロとした憎しみにまみれた声が漏れ出す。
 魔法の明かりに照らされギラギラと輝く瞳に奥に、赤黒い炎が燃えている。瞳の奥に燃え盛る炎は、故郷を、ダングルテールを滅ぼした者を尽く燃やし尽くすまで消えることはない。

「……私は……」

 アニエスは床に膝を着き頭を垂れた姿で声を震わす。
 それはまるで敬虔な信徒が神に祈るかのようであり。
 また、自身の身体の奥で燃え盛る復讐の炎に誓約するかのように、

「……貴様たちを……決して逃がしはしない」

 赤黒い復讐心で固められた硬い声で、

「……必ず……全員地獄に……叩き込んでやる……ッッ!!」

 誓った。




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