第六章 贖罪の炎赤石
第四話 迫り来る脅威
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いた。特に火の塔の近くに特に何かあるという訳もなく、引き返そうとした二人だが、金属を叩くような耳慣れない音に足を止めた。誘われるように音が聞こえる方向に歩き出した二人の目に、ゼロ戦に取り付いて整備を行っているコルベールの姿が映り込む。
その姿は、まるで男の子がお気に入りの玩具で遊んでいいるように見えた。心底楽しげな顔で、ゼロ戦を調べて回るコルベールに向かって、キュルケが声を掛ける。
「随分と楽しそうですわね」
「ん? ミス・ツェルプストーじゃないですか。どうかしたのですかこんなところに来るなんて?」
キュルケの声に反応して振り返ったコルベールは、キュルケたちに向かって笑いかけた。
軽く口の端を曲げた笑みをコルベールに返したキュルケは、視線をコルベールの後ろ、ゼロ戦に向ける。
「特に用事があったというわけじゃないんですが……それ、確か『竜の羽衣』でしたわね?」
「ゼロセンと言うらしいですよ。この前シロウくんからやっと好きに弄ってもいいとの許可が下りましてね。色々と調べていたんですが、全く驚きの連続ですよ!」
キュルケの視線に沿うように顔を移動させたコルベールが、ゼロ戦を指差しながら声を上げる。
興奮して声を荒げるコルベールに、キュルケは冷ややかな視線を向けた。
「だから、あなたは王軍に志願なさらなかったんですね」
「む……まあ、その通りだね」
子供のようにはしゃいでいた様子を一変させ、悲しげに目を細め顔を背けるコルペールの様子に、キュルケは小さく溜め息をはいた。
シロウがもしもの場合はコルベールを頼るように言っていたけど、この人の何に頼れって言うのよ……。
迫りくる戦争から目を逸らし、逃げるように研究に没頭するコルベール。
どんな系統よりも戦いに向く火の使い手が、戦いから目を逸らすとは情けない。
「……争いは嫌いでね」
男として、教師として、自分が恥ずかしくないのだろうか?
いつもなら、軽蔑の視線を向けて去るだけだが、士郎の言葉もある。さっさとここから離れたい気持ちをグッと押さえ込んだキュルケは、顔を上げないコルベールに向かって言葉を吐き捨てた。
「シロウがいざという時はミスタに頼れと言っていましたが、どうやらシロウの見たて違いのようですわね」
「シロウくんが?」
かけられた言葉に顔を上げたコルベールに背を向けたキュルケは、タバサを促して歩き出した。
「ミス・ツェルプストー!」
声を掛けられ足を止めたキュルケは、振り返らずに返事を返す。
「何ですかミスタ?」
「……シロウくんがわたしを頼れと言ったのかい?」
「ええ」
「本当に?」
「はい」
「…………」
コルベールが急に押し黙ると、キュルケはそのまま止めていた
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