暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第四話 迫り来る脅威
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
話しかける。キュルケは唐突に現れたロングビルに対する動揺が完全に収まってはいないが、それでもロングビルの言葉に耳を傾けた。
 キュルケに顔を向けず、新たなサンドイッチに手を伸ばしながら、ロングビルは話しを続ける。

「ま、そりゃ大丈夫でしょ。戦争に参加するにしてもしないにせよ。公爵家に居るのは色々と不味そうだしねぇ……主にシロウが」
「そうだけど……帰って来れるの? シロウたちが帰りたくても、公爵が帰さないと決めれば、早々帰れるとは」
「普通は……っん、もぐもぐ……っんく……ね」

 キュルケの話しを聞きながら、ロングビルはもぐもぐとサンドイッチを咀嚼する。最初と同じようにあっと言う間にサンドイッチを飲み込むと、膝の上に置いた包みに一緒に入れていた水筒とカップを取り出す。紅茶をカップに注ぎ込むと、サンドイッチでぱさつき始めた口の中を潤し始める。ゴクリと喉を二、三度鳴らすと、手に持ったカップを膝の上に下ろす。

「でも、シロウだからねえ」
「……そう、言われると……まあ、確かに、そう、かしら」

 公爵が例えルイズたちを魔法学院に帰さないようとしたとしても、ルイズを、シロウを止められるとは思えなかった。シロウと対峙したことがあるからこそわかる。彼は、シロウは桁が違うと。
 実戦は数える程しか経験はないけど、それでもわかることはある。対峙した際に感じたあの圧迫感。全身に鳥肌が立つ感覚。
 シロウとまともに相対できる者がいたとしたら、それは多分、噂に聞く烈風カリンぐらいだろう。
 キュルケがロングビルの言葉に小さく何度も頷いていると、何時の間にか包みの中にあったサンドイッチを全て食べてしまっていたロングビルが、口元をハンカチで拭きながら苦い声で呟いた。

「あたしとしては、シロウが帰ってこられるかどうかよりも気になることがあるんだけどね」
「何それ?」
「ルイズには上に二人姉がいるそうなんだけど……シロウのことだから、何時の間にか誑し込んでそうで……」
「うっ……それは……否定できないわね」

 二人の間に沈黙が満ちる。 
 脳裏には笑いながら頭を掻く士郎の姿が浮かぶ。
 士郎の何気ない行動が、結果として女を誑かす。
 そういうところが士郎にはある。
 厄介なところは、本人にその気がまったくないというところだ。

「帰ったら説教だね」  
「ええ、色々と用意しておくわ」

 にこりと笑い合う二人の横で、タバサが本に視線を落としながら、

「……ご愁傷様」

 ポツリと呟いた。







 ロングビルと今後のことを話し合った後、キュルケはロングビルと別れ、タバサと一緒に散歩をしていた。行き先は特にない。ただ何となくぷらぷらと歩いていただけの二人は、気がつけば火の塔の近くまで来て
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ