第一章 グレンダン編
天剣授受者
嫌よ嫌よも好きのうち
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デルボネの声には心配が、ティグリスの声には不満が篭っていた。
もしも、シキがそれを知ってしまったら最悪、天剣授受者総出で相手する事態になりかねない。負けはしないだろうが、その場合グレンダンが崩壊することになるだろう。
「……」
『迷ってますか? ティグリス』
「あぁ、迷っている。正直、シキを殺せるかわからない」
ティグリスは正直に心情を吐露した。
最初会ったときは殺せると感じていたし、殺してしまおうかと思ったほどだ。
だが、今では殺し合いなど出来はしないだろう。
「孫のように感じてしまってるからな」
シキと会って三年、短くもあり長い年月だ。
師事している間にティグリスは、どんどん技術を覚えていくシキにこう思ってしまった。
「俺の技術の全てを受け継がせたいと思った。思ってしまったんだ、デルボネ」
『あらあら、昔の口調に戻ってますよ? ティグティグ』
デルボネとティグリスは随分と久しい呼び方でお互いを呼び合う。
ティグリスも武芸者だ、後世に技術を残せるならそれに越したことはないし面白いものだ。スポンジのように覚えていくシキならなおさらだ。
それにティグリスにとってシキは孫のような存在になってしまっていたからだ。
「……老いたかな、俺も」
『ええ、私もですよ。少々、老いました』
ティグリスは廊下から見える月を見上げながら言う。
「天剣授受者選定式にはシキは出るのか?」
『出るでしょうね。後、あの子も出るようですよ。この前、シキと共闘していたあの子です』
ティグリスは眉を細めながら、短く笑った。
「それは楽しみだ」
レイフォンは、弟たちを寝かしつけた後、自室に戻る。
自室と言ってもシキとの共同部屋なのだが、今はシキはいない。何やらトラブルがあり、ロンスマイア家に泊まるらしい。
「……」
レイフォンは机の上に錬金鋼を置く。
二つの錬金鋼だ。
「どうすればいい?」
レイフォンは頭を抱える。天剣授受者選定式で使う武器についてだ。
剣を使っても並みの武芸者に負けることはないし、天剣授受者にだって健闘できるとレイフォンは確信している。だが、もしもシキと戦うのであれば負ける、確実にだ。
刀を使えば五分五分まで持っていけるが、レイフォンは悩んだ。
天剣授受者は確かに輝かしい称号だが、それは金を手に入れるという汚い目的のための手段でしかない。祖父が最初に与えてくれた刀を汚してでも、手に入れてもいいのかわからなかった。
シキも出ると、今日、デルクが言っていた。
確実にシキは決勝まで上がるだろう。レイフォンがいなければ天剣になると思う。レイフォンはそう確信していた。
だがレイフォンも出るということは、いずれは戦わなければいけない。
「どうしたらいいんだ?
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