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鋼殻のレギオス 三人目の赤ん坊になりま……ゑ?
第一章 グレンダン編
天剣授受者
嫌よ嫌よも好きのうち
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れているシキを発見した。最初はドッキリか何かと思っていたらしいが、本当に気絶しているのに気づく。そのまま彼女の実家であるロンスマイア家まで運び込み、医者に一応見てもらったらしい。
「でも本当によかったです。お医者さんは健康すぎて来た意味がなかったと言ってましたが」
「……健康? 俺、三日くらい飯食べてないんだが」
「それはいかんな。クラリーベル、すぐに食事の準備をするように料理長に言っておいてくれんか」
 クラリーベルは元気よく、返事をしながら部屋を飛び出していった。
 シキはその様子に頭を抱えそうになったが、なんとか平静を保つ。
 ティグリスはクラリーベルが離れていったのを確認すると、雰囲気を変える。優しげな老戦士風だったのが、今は触れれば斬れる獰猛な戦士風である。
「……さて、どうして倒れていた?」
 口調には一切の感情が乗っていない。シキはそれを感じ取り、できるだけ事実を話す。
「空腹で倒れたんだと思います。もしくは体調不良か」
「ふむ、嘘は言っていないようだな」
 ティグリスの目がしっかりとシキの目を捉える。
 一瞬でも逸らさないと言わんばかりに、その眼光はシキを捉えて離さない。緊迫した空気が部屋を支配する。
「……」
「……」
 無言、シキは息苦しさを感じたが、それを顔に出さないようにする。
 それは一分なのか、はたまた数秒だったのかシキにはわからなかったが、ティグリスは視線をシキから離した。それと同時に部屋から緊迫した空気が霧散した。
「一応、デルボネから孤児院には連絡を入れた。今日は泊まっていきなさい」
「感謝します、ティグリスさん」
「すまなかったな、問い詰めるようなことをして、お主に何かがあったらクラリーベルが悲しむ。じじ馬鹿かもしれんが、クラリーベルには幸せになってほしいのでな」
 そう言って笑い出すティグリス、しかし目が笑っていない。シキは、これからクラリーベルには優しくしようと決意した。
 だがティグリスが言った『幸せ』という意味には気づいていなかった。


「……本人は何も覚えていない」
『そうですか。しかし驚きましたよ、いきなり消えるんですもの』
 ティグリスは、食事を早々と終えてシキとクラリーベルを二人っきりにしていた。将来のことを考えてことでもある。
 そして廊下を歩きながら、デルボネと話していた。
「あの時の子供が成長し、弟子となり、孫の師になるとはな。これは因果か?」
『さぁ? それは私も知りませんよ』
 デルボネは落ち着いた声でそういう。ティグリスはその声を何十年も聞いてきた。
 戦場で、日常で、若さの過ちで……。
『それよりも、彼は真実を知っても王家を憎まずにいられるのでしょうか』
「いずれは知らねばならない事実だ。それに当人たちはもう出会ってしまった」
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