第一章 グレンダン編
天剣授受者
嫌よ嫌よも好きのうち
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互いを嫌っているが、それを上回るくらい大事に思っているし、羨んでいる。
「……腹、へったぁ」
シキはトボトボと歩いていた。
リーリンの説教が終わった後、孤児院から抜け出したのだ。
「俺たち武芸者が大食いくらいだって知ってるだろうに……」
武芸者は剄を使うため、一般人よりもよく食べる。線が細い武芸者でも信じられないほどの量を食べる。基本的に武芸者も人間である、人間である以上、エネルギーを補給しなければ倒れる。
シキほどの剄力を持つものならなおさらだ。
「ヤバイ、ふらついてきた……三日食ってないとこうなるのかー」
フラフラとシキの身体が揺れる。いつもはしっかりした足取りが、今ではふらつきぐちゃぐちゃになっていた。この三日間、シキは自分が食べる食事を他の孤児たちに回していた。いや他の孤児院の子供たちにだ。
自己満足かもしれなかったが、シキは余った食事を時々だが他の孤児院に配っていた。微々たる量だが、それで助かる命もあるかもしれない。
グレンダンは度重なる天剣授受者の選定と汚染獣戦で金がない。孤児院に回そうとする金などないくらいにだ。それを悪いとは言えない、武芸者を大事にするというのは都市にとって重要なことだ。武芸者がいなければ都市は格好の餌場であり、死しか待っていない。
シキもここまで自分がふらつくとは思っていなかった。ヘタをすれば一週間以上は戦えるのがシキだ、この程度でへばるほどヤワではないのだが今回はなぜか限界だった。
意識が朦朧としてきた時に、誰かがシキの傍に立った。
「あ――――」
そしてシキの意識はぷっつりと切れた。
次にシキが気づくとそこは暗闇だった。
「……なんだ、ここは」
身体に剄を回し、異常個所を確認するが至って良好、むしろ体の調子は絶好調に近い。まるで重りを失くしたように身体が軽い。今なら、空も飛べそうだった。
「バカみたいに剄が溢れてやがる。……暴走する気配はないが」
いつもどおりに出した剄だったが、あっとういう間に身体から溢れ出し、周囲に剄が渦を巻く。このくらいの規模になると暴走するのが普通なのだが、今のシキにはこれが普通じゃないのかと思うほどしっくりと来た。
シキは剄を止めて、息を吐く。
「気分がいいな。なんだ、ここ?」
昔、汚染獣との戦いで地下空洞に取り残されたこともあったが、ここはゴツゴツとした岩の感触がない。道場の床と似たような感じがした。
そんな時だ、シキの耳に歩く音が聞こえた。
身構えながら、ふと違和感を覚える。この足音には聞き覚えがある、だがシキの知り合いにこんな足音をする人物はいない。知っているのに知らない、そんな違和感を抱えながらいると、シキの目の前に誰かが立った。
「おいおい? なんでここにいるんだ? お前の出
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