第一章 グレンダン編
天剣授受者
嫌よ嫌よも好きのうち
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のだ。
今日は休みの日と決めているので、シキは思う存分惰眠を貪ってもいい。
小うるさい姉も、最近はぶん殴ると笑顔二割増しになる弟子、メンドくさい天剣たちもいない。久々にゆっくりできる日だったのだが、シキは寝る気にはならなかった。
普段なら夜まで死んだように寝るはずなのに、今日は起きてしまった。
「むぅー!」
苛立ち混じりにそう声を出すと、部屋が揺れる。制御が不安定になっていた剄が声に乗り、小規模な戦声を放ったのだろう。大きな剄も持つということも考えものだ。制御できなければ破壊しかもたらさない。
そんなことでシキは昔を思い出した。
まだ剄を知らずに制御も今よりも下手くそだった頃、シキは人を傷つけてばかりだった。
手で触れようとすれば骨を砕きかけ、おもちゃで遊ぼうとしても壊し、次第に周りから孤立していった。一時期はリーリンとレイフォン、一部の大人しか近寄ってこなかったこともあった。
物心つかない頃はまだいい、問題は着いてからである。明確な孤立に追い込まれたシキは心に深い闇が生まれた。
自分の力が嫌いだった時もある。仲良くしたい、触れ合いたい、そう思っていてもシキの手はたやすく人を壊す。デルクも制御させようといち早く訓練をさせていたのだが、シキは剄の制御、主に加減が下手くそだった。
今ではたまにしか暴走させなかったが、感情が高ぶると剄が溢れ出し衝剄が周囲を破壊することがあった。何度も吐き出し、気づけば辺りでは恐怖に染まった孤児院の家族がいた。
だからだろう、シキは人から嫌われることを極端に恐れる。シキが武芸者として汚染獣討伐をしているのも、昔、武芸大会で優勝して孤児院全員から賛辞を送られたからだ。今まで恐怖しか浮かばなかった家族の目に、初めて喜びというものが感じられた。
だからこそ、剣を使わない。
初めて使ったときは、その使いやすさに驚いたものだ。刀とは段違いに手に馴染み、空すら切れるんじゃないかと思ったくらいだ。
しかし、剣を嬉しそうに振っている時、シキは見てしまったのだ。デルクの寂しそうな顔、そして気づいたのだ、自分がどんなことをしたのか。いつも味方だった義父を裏切ろうとしたのだ。サイハーデン流は刀の流派、剣の流派ではない。
そしてシキのトラウマが剣を使うことを禁忌とみなした。
だが、シキは刀に満足しきれず他の武器を使う。だが、デルクの顔には以前のような寂しさは見受けられなかった。だから使う、ただし剣は絶対に使わない。絶対にだ。
そして最大の悩みだったのが、自分の容姿だった。
女っぽい、男には見えない、聞こえはいいが本人は苦労することが多い。初対面で女だと思われたまま、馬鹿にされたこともある。口説かれたこともある(この後、都市警に連絡した)。
何よりもあべこべになるのだ。自
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