第一章 グレンダン編
天剣授受者
嫌よ嫌よも好きのうち
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、信じられない力がレイフォンの腕を襲い、シキはいとも簡単に木刀を奪い取ってしまった。
シキの力は強い。武芸者として剄の修行をした今のレイフォンならわかるが、それは溢れ出る剄が自動的に内力系活剄に変換し、シキの筋力を強化していたからだということに。
「おー、軽い軽い!! ねー、父さん、振ってもいい?」
と質問しているが、既にブンブンと振っているシキ。デルクはそれを見てド肝を抜かれていた。しかし表情には出さなかった。
何も訓練せずにこれなのだ。将来、どういった武芸者になるのか、一武芸者として興味があった。
だがレイフォンは違った。悔しかった、同じ歳で、同じ時期に院に入り、同じように生きてきたはずだ。
思えばシキはレイフォンよりも上をいっていた。なんでもだ、食べる量、起きる時間、対人関係、訓練、そしてリーリンとの仲。今だと、才能の差という言葉で片付けられるかもしれない状況だが、当時のレイフォンにそんな『逃げ方』はできなかった。
手を出した。笑っているシキの顔にストレートを入れたのだ。
デルクは驚いた顔で止めようとした。しかし当のシキは、目を見開いたままこういった。
「レイフォン、おれの顔にゴミでもついてたの?」
「え……」
ケロリとした顔で、レイフォンを見つめる。ジンジンと殴った手が痛かった。
これは偶然だが、簡易的な金剛剄をシキは使っていた。殴った方のレイフォンの痛みは相当なものだった。痛みに耐え切れずに泣いてしまうレイフォン。
それを心底不思議そうに見るシキと複雑な顔をしているデルク。
こんなことがしょっちゅう起き、レイフォンはシキのことが大嫌いだった。それは十歳になった今でも変わらない。
そう思ったレイフォンは力任せに木刀を振る。
剄で強化された筋力によってか、それとも古ぼけていたのか、根元からボッキリと折れて孤児院の一室に目掛けて飛んでいった。
「あっ」
レイフォンは顔から血の気が引いている感触に気づいた。あの部屋には確か……。
「むぅー?」
寝ぼけ眼を擦りながら、シキはゾンビよろしく起き上がる。
髪の毛はあらぬ方向に飛び、顔を覆い隠している。まるで井戸から出てきそうな風貌だが本人に悪気はない。これでいて髪質が孤児院の中で一番イイというのだから、女性陣からは大層羨まられている。
そしてベッドから出ようとして、布団に足を取られて頭から落下する。
ゴキリと嫌な音がした。しかし、寝ぼけているシキはそれを無視して起き上がる。
「……むぅー」
まだ頭が起きないのか、シキはトロンとした顔で辺りを見回す。レイフォンがベッドからいなくなっているが、気はしない。多方、特訓で道場にいるのだろう。
シキの場合、下手に剄技を放つと周辺の建物を壊しかねない。なので外縁部でやるしかない
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