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魔王の友を持つ魔王
§28 広がる戦禍
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くか。神格貸与が出来ればよかったんだが……まぁいいか。無い物ねだりしてもしょうがない」

 八雷神は完全に権能を掌握をしていない。同時期に簒奪した迦具土や大国主はだいぶ掌握できているのだが、彼らの権能よりも八雷神の方が制御も含めて甘いのだ。制御の方は日々雷龍を顕現させて慣らしているのだが、まだ完全制御には時間がかかるというのが正直な感想だったりする。大雑把な、もといアバウトな性格がこんなところで災いするとは。雷龍制御ですらこれなのだから、神格貸与や権能改竄など推して知るべしではある。自分にする程度ならまだしも、こんな有様では恵那に護身用に神格の委譲をすることが適わない。下手に貸与しようとして暴発したらこと(・・)だ。

「どしたの?」

 小声で呟いたつもりが断片的にでも恵那の耳には入っていたらしい。野生児の聴覚恐るべし。曖昧な笑いで誤魔化して、恵那の持ってきた羊羹を見やる。

「おぉ……」

 素晴らしい。そんなことを思いながら、均等に切り分けられた羊羹と抹茶に黎斗の目が留まる。手が勝手に羊羹への伸びた。まず、一口。とろけるようなまろやかな、それでいてクセの無い甘みが羊羹独特の香りと共に味覚と嗅覚を愉しませる。抹茶の苦みと芳香がそれを更に引き立て、羊羹を食べる手が進む進む。

「目がキラキラしてますな……」

 呆気にとられた様子の甘粕を尻目に至高の時間を満喫する黎斗。適度な歯応えの羊羹は、柔らかすぎず、しかし硬すぎず。甘粕から見ても一流の物であるとはわかるのだが、ここまでおいしそうに食べられるのは一種の才能ではないか、などと思わず思考が脇道に逸れる。見ているだけでこっちまで幸せになってくる食べっぷりだ。

「マスターは羊羹とラーメンが大好きですから。マスター、私の分も入ります? キツネ一匹分の羊羹なんてたかが知れてますけど」

「おぉ……!! さっすがエル、話が分かるぅ!!」

 上機嫌でぺろりと平らげる黎斗。一口で平らげた後、もっと良く味わって食べなかったことを後悔して絶望に打ちひしがれる。この光景を見て「今度来るときは和菓子を持ってきましょうかねぇ」などと甘粕が考えたりするのだがそれは別の話である。





「……まさか教主様が猿猴神君の復活を投げるとは」

「あてが外れたな。さて、どうする?」

 どこか遠く、離れた場所で。魔女王は庇護者と二人、想定外の事態に頭を抱える。神祖(アーシェラ)魔王(きょうしゅ)を用いて鋼の軍神である”中華の大英雄”を覚醒させる。使える駒が少ない彼女にとって、教主の持つ戦力がごっそり抜けたことは戦略の崩壊を意味する。???だが。

「いえ、まだです。まだここからです。幸い教主様はこちらの邪魔をしないと仰ってくださいましたし、生贄(アーシェラ)
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