第1話 長門有希と言う名の少女
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それでも尚、確実に成功するとは限らないのですが。
ふたつ目は、強制送還。
これは、何らかの理由で彼女が帰還を拒絶した場合で、更に、彼女の存在が、この世界に歪みをもたらす存在だと俺が判断した場合に行う方法。
……なのですが、成功率も低いですし、彼女に蓄えられている霊力の総量と、現在、彼女が消費しつつある霊力の量から推測すると、こんな問答無用の方法を取る必要はないと思いますが。
真っ直ぐに俺を見つめる長門有希と名乗った少女。その精緻と表現すべき麗貌に、メガネ越しのやや冷たい視線を乗せ、俺をただ見つめる。
そして、そう長くない沈黙の精霊が世界を支配した後、
「その提案は拒否する」
少し冷たい口調で、そう答えを返して来る長門有希と名乗った少女。
そして同時に何かの理由を感じさせる雰囲気を発した。但し、そこに微かな違和感。彼女自身の中に、その理由に対する齟齬が有るかのような感覚。
この感覚は……。
「自ら、朽ち果てる事を望むと言うのか?」
俺の少し強い問い掛けに対して、無言で小さく首肯く彼女。
しかし、そこから感じられるのは、達観と寂寥。どう考えても、使命感などは存在してはいません。
これは、自ら望んで死に向かうと言うよりも、何者かの命令に無理矢理従わせられている、と言う雰囲気ですか。
彼女の対応や雰囲気。ここから推測出来る事は、彼女は何者かに真名を支配されて使役されている存在、……だと考える方が正しいでしょうか。
いや、もしかすると彼女は、何らかの人工生命体に魂が宿った存在の可能性も有るな。
那托やフランケンシュタインの化け物。ホムンクルスなどの例も有りますからね。それに、長い時を生きて来た人工生命体に付喪神系の心が発生する事は良く有る事です。
元々、人に似せて造られた存在で有る以上、人に似た心=魂を発生させ易い姿形をしていますから。
そう思い、改めて長門有希と名乗った少女を見つめる俺。
しかし、その場合でもひとつの疑問は残ります。それは、何故、彼女は単独で行動しているのか、……と言う疑問が。この世界に異世界の存在が現界し続けるには、ある程度の霊力の補充が為されなければ異界の存在はやがて消えて仕舞う事ぐらい、召喚士や錬金術師ならば知って居るはずなのですが。
それは当然、人工生命体で有ろうとも違いは無かったはずです。
「人の死は問題が有る。特に、無念の内に死した魂は陰の気を帯び、そのままでは輪廻の輪に還る事が出来なくなる」
まぁ、この場にいない彼女の使役者についての詮索は後回し。先ずは、彼女に対しての説得が先でしょう。
何故ならば、こうしている間にも、彼女の生命の炎が燃え尽きるまでのカウント・ダウンは行われているのですから。
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