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ヴァレンタインから一週間
第1話  長門有希と言う名の少女
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視線を長門有希と名乗った少女から外して、在らぬ方向へと泳がせる俺。その刹那、瞳に映る自らの左腕。其処には、朝、出掛けに巻いたお袋から貰った古い腕時計が時を刻んでいた。
 但し、どう考えても、正確な時刻を指し示しているとは思えないのですが。

 いや、そう言えば……。

「それならば、ここは何処で、今の時間が何時なのか教えて貰えるかな?」

 これも多少は重要ですか。そう考え、俺を真っ直ぐに見つめる長門有希と言う名前の少女に対してそう問い掛けた。

 そう。少なくとも、俺と彼女は、日本語で会話を交わしているトコロから、この国が日本だとは思います。ですが、それでも、ここが確実に徳島だとは限りません。まして、さっきまで朝……時空転移をする前は確実に朝だったのに、彼女の背後の窓から見える景色から想像すると、今では明らかに夜ですから。

「ここは西宮。今は、二〇〇二年二月十四日の午後十一時二十五分」

 長門有希と名乗った少女が彼女独特の抑揚の少ない無機質な話し方でそう答えてくれる。
 その口調、及び雰囲気は、珍しい対応ですが、絶対に存在していない訳でも有りません。
 ……そう言えば、この手の受け答えをする種類の悪魔や神霊は居ました。確か、造られた存在に多い反応だったと記憶していますが。

 そう考え、一応、念の為に、彼女に対して見鬼を行う俺。

 ……種族不明。但し、人間ではない事は確実。そして、その結果に因って、先ほどまで感じていた違和感のような物に答えを得られた。
 異常に静かすぎる瞳の中に、ごく僅か。おそらく、気を読む俺だから感じられるほどの、ごく僅かな絶望を感じていた事に対する答えが。
 それは、彼女の気。分かり易い言葉で説明すると、人間以外の存在がこの世界で活動する為に必要なエネルギーの霊力が徐々に減って行っている事が判ったから。

 もしかすると彼女は、はぐれの式神や使い魔の類か、もしくは魔界から召喚されたものの、その召喚者を殺すか、逃亡した挙句、偶々潜んでいたこの部屋に俺が現れたと言う可能性も有りますか。

 そう思い、探知の精度を上げて彼女が発する気を、更に掴もうとする俺。もし、彼女が危険な存在の場合は見過ごす事が出来ませんし、不意打ちのような事を行って来る可能性もゼロでは有りませんから。

 しかし……。
 探知の結果から、その俺の考え自体が杞憂に過ぎない事は直ぐに判明する。

 そう。それほど邪悪な雰囲気を彼女……長門有希と名乗った少女から感じる事は有りませんでした。確かに、少しの陰の気を感じるのは事実なのですが、これは邪悪と言うよりは、寂しさの類。この雰囲気だと、召喚者を殺してからの逃亡は有り得ないでしょう。
 ……だとすると、彼女も俺と同じように、次元の裂け目に誤って落ち込んで仕舞
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