暁 〜小説投稿サイト〜
ヴァレンタインから一週間
第1話  長門有希と言う名の少女
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髪の毛の色をしていますが……。う〜む。脱色して、紫色にでも染めているのでしょうか。瞳については、現在の照明の具合から推測するしかないのですがブラウン系に見えます。そして、肌も象牙の色。
 少なくとも、顔の造作はかなりのレベルの美少女で有るのは間違いないでしょう。

 ただ……。いや、この部分はおそらく、勘違い。

「貴方が、この部屋に現れた理由は不明」

 彼女を見つめたまま、思考の海に沈み欠けた俺に対して、メガネ装備の美少女がそう答えた。抑揚の少ない、妙にぼそぼそとした聞き取り辛い話し方で。
 ……って、良く考えたら、俺は自己紹介すらしていなかったか。

「すまない。先ずは自己紹介が先だったな。俺の名前は武神忍(タケガミシノブ)。何か、女の子のような名前だけど、あまり気にしないで欲しい」

 一応、立ったままではあまりにも失礼なので、彼女の対面側に腰を下ろし、ちゃんと正座の形を取って、そう挨拶を行う俺。
 しかし、最低限の礼儀すら忘れるとは、流石の俺も気が動転していると言う事ですか。
 それに、目の前の彼女の様子や、この部屋の雰囲気から、俺が暮らしていた世界の可能性は高いとは思いますけど、それでも、今回俺に起きた事態が、実は次元移動を伴う現象だった可能性も未だ存在して居るとは思いますね。

 そう。彼女の服装はどう見てもセーラー服です。それに、窓の外に見える景色から推測すると、ここはそれなりに高い位置に有る部屋。フローリングの床など様子から、おそらくはマンションの類と推測出来ます。
 少なくとも、ここが剣と魔法の支配するファンタジー世界ではないと思いますから、現代社会には違いないでしょう。

 但し、その事実だけで、確実に俺が暮らしていた世界と、イコールで繋ぐ事が出来るとは限りませんから。

「わたしのパーソナルネームは長門有希」

 俺が自己紹介を行ったからなのか、そのメガネ装備の美少女も自らの名前を名乗った。
 しかし、なんと言うか、妙に抑揚のない喋り方で話す女の子ですね。それに、パーソナルネームって、少し妙な表現方法だとは思うのですが……。

 その長門有希と名乗った少女を見つめる俺。しかし、真っ直ぐに俺を見つめ返すその瞳と、そして……。
 矢張り、違和感。この瞳は――――

 ………………。

 まぁ、良いか。先ずは現在の状況の把握が先でしょう。そう考え直し、彼女から少し視線を外して仕舞う俺。尚、これは別に、美少女をじっと見つめる事に照れた訳では有りません。
 まして、彼女の瞳に気圧された訳でもないとも思いますし……。

 それに、この部屋の室温から考えると、いきなり部屋から叩き出されないだけでも先ずは()しとすべしですし、その部分だけでも彼女には感謝をするべきですから。

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