第4章 聖痕
第42話 蛇たちの父
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定かではない。
しかし、そんな事は関係ない。今、俺が為せる事を為す。
精一杯、この地に眠る癒されない魂たちに届くように。
強く、弱く。
肉体の感覚を失い、まるで、笛と一体化したような状態。
笛の音を通じて、冥府にまでも辿りつけるかのような錯覚さえもたらせた後、少なくない余韻と共に、鎮魂の笛は終わった。
「御苦労様です」
笛が吹き終わり、すべての余韻が過ぎ去った後、最初にそう言ってくれるのは、何時でも彼女で有った。但し、魔法学院で過ごす時とは違う衣装での登場だったのですが。
「毎度、毎度、鎮魂の笛に付き合って貰って、済まないな。
モンモランシーの仕事は地上での仕事だけやから、わざわざ、こんな坑道の内部にまで付き合う必要はないんやで」
あれから一週間。具体的には、六月 。第三週。オセルの曜日にまで時間は過ぎています。
尚、俺とタバサ、そして、アリアはそのまま、ベレイトの街の後処理の任務に就く事を命じられ、現在は、ベレイトの街の地下に張り巡らされた岩塩坑道内を、鎮魂の笛によって魂たちの慰撫を行っている最中と言う訳です。
但し、この後に、この鎮魂を行った坑道の地上部分に、その場に合った街路樹を植える作業が待っているのですが。
例えば、桃、桜、梅、柿や栗。銀杏なども。
これは、モンモランシーが持って来た苗木を、俺やタバサ。それにアリアなどが霊力で有る程度の大きさにまで育てる必要が有るので、かなり時間や霊力が掛かる作業なのですが。
しかし……。
「いえ。私も依頼された仕事はこなす必要が有ります。それに、鎮魂の笛と言う術は私の家には伝わって居ませんから、シノブさんのお手伝いをする事は出来ませんが、それでも、共に死者を悼む事ぐらいは出来ますから」
黒い魔女が被る先が尖がった帽子に、黒い魔術師のマント。そして、その手に握っているのは、月の光りを宿せし魔術師専用のナイフ。
その衣装は、間違いなく円錐をイメージした魔女そのもの。それも、このハルケギニア世界に存在する魔女ではなく、ケルトの神話に源流を発するウィッチ・クラフトと呼ばれる魔法使いそのものの姿。
そう。モンモランシーの操る魔法は、水の系統魔法と言う物ではなく、ウィッチ・クラフトだったと言う事。ただ、もしそうだとすると、彼女の魔法には呪いなどの黒魔術に属する部分も存在するとは思うのですが。
そして、彼女が持ち込んで来た樹木の苗木と言うのは、樹木を使って、根から吸い上げた大地に籠った悪しき気を、葉を使って天に返すと言う魔法を行う為の苗木でした。
ただ、俺の知って居る仙術の中にも同じような魔法が、風水・卜占術の中に存在しているのですが。
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