第4章 聖痕
第42話 蛇たちの父
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「コイツらの相手でもしていな!」
無造作に振るわれたリードの右腕。
刹那、現れる、……何もないはずの空間に穿たれる、穴、穴、穴……。
穴は、水面をかき乱す気泡の如く、次々と何もない空間に穿たれ……。
「タバサ、俺の三メートル以内に近付け!」
素早く、そう叫んだ後、自らと、直ぐ傍らに居るアリアを風及び、自らの生来の能力で全ての飛び道具に因る攻撃を封じる陣を画き出す。
そう、おそらく、今、ヤツに因って呼び出されつつある存在ならば、この陣で防御は可能だと思います。但し、この陣の内側から攻撃を行う事はおろか、この陣を解除しない限りは動く事さえ出来ないと言う、非常に不便なタイプの防御用の陣なのですが。
刹那、リードの身体から立ち昇る蛇気に絡みつくように、空間に穿たれた黒き穴から、瘴気と狂気を孕んだ大量の何モノかが放出された。
そう。それは、鞭のようにしなって坑道の床を、壁を、そして天井を叩き、虚空に弧を描きながら俺の造り上げた風の結界と、ハルファスの施せし結界を叩き続けた。
「流石は、ヘビたちの父と呼ばれるだけの事は有る」
半ば呆れ、そう言う台詞を口にする俺。
そう。確かに、かなり有名な墓泥棒兼大学教授ならば正気を失った可能性も有るでしょう。しかし、俺をこの程度の連中で恐慌状態に陥れられる訳は有りません。
床と言う床。天井と言う天井を這いずる幾千幾万の蛇。
七歩蛇が、百歩蛇が、マジムシが、脛コロバシが、野守虫が。その他、幻想世界及び、現実世界に存在する有りとあらゆる種類の蛇が、この坑道内に現れていたのだ。
そう。そしてその蛇たちが、リード・アルベロを中心とした空間内に、何千、何万と言う数で渦を巻き、絡み合い、まさにそれ自体がひとつの大蛇かと思わせる姿で、とぐろを巻きつつ、俺達に対して獲物を見つめる瞳で睥睨しているかのように感じられた。
少しの湿り気を帯びて、不気味な動きを繰り返す蛇の絨毯……。いや、この坑道内自体が全て蛇で作り上げられた、巨大な何モノかの内蔵を思わせる。
そして、その一体化した蛇が徐々に現世の浸食を行う為に、俺の施せし風の結界に対する圧力を増す。
刹那。蛇たちが、終に風が護りし結界にぶつかった。
その瞬間、風に赤き色が混じる。いや、それだけではない。真っ二つに斬り裂かれ、内蔵を撒き散らし、数多の蛇たちが風に巻き込まれ生命を無駄に消費して行く。
今は大丈夫。しかし、このままでは時間が過ぎるばかりで、何の解決も為せない。
もし、このリード・アルベロの言う事が本当の事ならば、今夜の夜半にクトーニアンの胎動により引き起こされる地震に因って、この街は滅ぶ。
俺は、少し振り返って、この世界に来てから出来上がった相棒の顔を見つめた。
こ
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