§24 黎斗と護堂と須佐之男命と
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」
軽くドアを叩いてみる。チャイムがぶち壊れているらしく反応しないのだ。こんこん、という音は思いの外良く響いた。
「はーいー」
ドアが開き、キツネが現れる。たしかエルといったか。キツネはぺこりとお辞儀をし、中へと護堂を招き入れる。
「ようこそ、草薙護堂様。八人目の羅刹の君。私は神殺し、水羽黎斗の使い魔を務めさせていただいておりますエルと申します。以後お見知りおきを」
「あ、あぁ……よろしく」
流暢に喋るキツネに目が点になる。こんなに饒舌な動物に会ったことなど、ない。もっとも喋る動物自体見ないけれど。
「そうそう、私は分類上、妖狐に分類されますしもう少しで千年を生きますが,これといって特別な能力はありません。そこらの野犬に負けるくらいの実力です。私の事は人語を介するだけの一般動物、としてお考えくださいますようお願い申し上げます」
「喋れるってだけで十分すごい……って、もうすぐ千年?」
「黎斗に命を頂いたのが数百年前ですので」
護堂の胆が冷える。黎斗は少なく見積もっても数百年生きているらしい。それでは、あのヴォバン侯爵ですら比較にならない大御所中の大御所ではないか!
「は、はぁ!?」
「もっとも、マスターの精神年齢は護堂様と同等かそれ以下ですのでご安心ください。少なくとも深夜までPCゲームにハマって同居人にパソコン禁止を言い渡されるようなマヌケな御方、私はマスター以外に知りません」
どこか呆れた風なエルの声だが、護堂の頭の中は新情報の洪水だ。
「……え? ちょ、ちょっと待て!! PCゲームってなんだ!? ってかあの彫像(スサノオ)は一体なんなんだ!?」
その問いに答えることなくエルは尻尾で器用に扉を開けた。こちらを向いたエルは笑っている。その問いが至極当然だ、とでもいうかのよう。
「全てはマスターに、尋ねてください」
「だー!! なんでここでForce of Willが来るんだよ、打ち消すなー!!」
エルの声に被さるように、黎斗の絶叫が響き渡る。ついでに何かが布団に倒れ込む音。
「「……」」
護堂とエル、両者揃って気まずい沈黙が包み込む。なんだかよくわからないが、部屋に入りにくい状況になってしまった。
「……マスターはまた敗北したようですね。まぁいいです。無視して入っちゃってください」
数瞬の躊躇いの後、決心した表情でエルが護堂に言葉を紡ぐ。
「え? え?」
足元で必死にエルが護堂を押してくる。キツネに押されたところで護堂にとっては痛くも痒くもない。寧ろ微笑ましいくらいだ。が、そんな表情を見抜いたのか不貞腐れた表情をエルが見せ
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