第4章 聖痕
第41話 フランケンシュタインの化け物
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そう質問を続ける俺。但し、この質問に関しては答えを大して期待していた訳では無いのですが。もしも、何かを覚えていたら、これから先のソルジーヴィオ商会に対する強制調査の際の役に立つ、と言う軽い気持ちからの質問だったと言う事です。
しかし……。
「ベレト エム ヘルゥ」
その俺の質問に対して答えるように、不死者アマトが、まるで不気味な呪文を紡ぐような雰囲気で、そう呟いた。
その彫の深い彫刻じみた顔に、異なる明度、異なる色合いの光がそれぞれに相応しい揺れと、明暗を作り上げ、彼が纏う死の臭いと共により深い陰の気を発している。
………………。
場所が悪かったか。これが、陽気溢れる初夏の平原ならば、このような不気味な雰囲気とは成らずに、彼が纏う死も薄まっていた可能性が高い。
しかし、ここは冥府への道を思わせる坑道内。更に時間帯的に言うと、そろそろ陽気溢れる太陽が支配する世界から、陰の気が支配する夜に移り変わる時間帯に至る。
そして、もっと悪いのは、彼が呟いた呪文めいた一言。あの言葉は確か……。
…………ん? 真実? それに、死者の書?
彼は、フランケンシュタインの化け物などではなく、最初のミイラなのか?
「何か妙な気配を感じたと思ったら、これはこれは、妙な客人たちがいらっしゃったものですね」
☆★☆★☆
突然、背後……岩塩坑道の入り口に近い方より、若い男性の声が響いて来た。
いや、厳密に言うと不意打ちではない。先ほどより、ダンダリオンが【念話】にて警告は発して来てはいました。
まして、この声の持ち主からは、近付くに従って、妙な悪意の渦のような物を感じていましたから。
ここまでの悪意を放つ存在を、気付かないはずは有りません。
そう思いながら、ゆっくりと振り返る俺。その瞳に映ったのは……。
大体、二十メートルほど向こうに立つ人影が五つ。
「初めまして、マジャールの蒼銀の戦姫と、オルレアンの人形姫」
その五つの影の真ん中に居る小さな影……と言っても、彼の両翼に並ぶ四つの人影の方が大き過ぎるだけで、その小さな影は普通の男性程度の体格だとは思われる。
その、声から察するに若い、俺とそう変わらない年齢の少年と表現しても問題ない雰囲気の商人風の衣装に身を包んだ男性が代表して、そう挨拶を行って来た。
恭しい貴族風の礼の後に。
尚、その挨拶の際にも、彼の両翼に立つ四つの影……古代エジプトの奴隷を彷彿とさせる衣装に身を包んだ巨大な存在たちが反応する事はなかった。いや、おそらく、彼らには自我など存在してはいない。
何故ならば、俺が戦った事が有るフランケンシュタインの化け物とは、この種類の存在。彼らには自我など
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