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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第41話 フランケンシュタインの化け物
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そう言った後、少し温くなったコーヒーを一気に煽った。

 成るほど。身体は、継ぎ接ぎだらけの皮膚の具合から見ても、死体か、それとも人工の物かは判らないですけど、それでも一人分の人間から造り上げられた存在ではないでしょう。
 ただ、何の意味が有って、彼をこのような姿にしたのか、と言う疑問が湧いて来るのですが。

 可能性としてなら、何らかの理由で強力な戦力を欲した連中が、人造人間の研究を行った結果、誕生した存在と考える方が妥当なのですが。
 しかし、その場合、彼、アマトがソルジーヴィオ商会から逃げ出して、ここに居る理由が判らなく成ります。

 そもそも、戦闘用のマシーンとして考えるならば、自我などはない方が良いですから。
 そして、俺が相手をした事が有る、フランケンシュタインの化け物系を操る敵。フロイライン・メンゲレと呼ばれて居た赤毛の少女が造り上げた人造人間には、自らの意志が存在しては居ませんでした。

 もっとも、メンゲレ家の悲願とは、完全なる不死の体現。死者に偽りの生を与える行為では有りませんでしたが。
 そこから類推すると、この不死者アマトは、その研究課程に於ける副産物としての人工生命体に過ぎないのですが……。

「成るほど。大体、理解出来ました」

 俺は、タバサとアリアの二人の判断を確認する為に視線を移しながら、不死者アマトに対しては、そう告げた。
 そう。ここから先は、タバサの使い魔に過ぎない俺の管轄では有りません。

「貴方は被害者です、ミスタ・アマト。以後の貴方の身柄は、私が責任を持って護る事を誓いましょう」

 ひとつ首肯いた後に、アリアが強き意志の籠った瞳でアマトを見つめながらそう答える。騎士道に従えば、社会的弱者には敬意と慈愛を持って接する事。そして、悪に対しては、何時いかなる時にも、どんな場所で有ろうとも正義を守る事。
 彼女が、この答えを出す事に何の躊躇いも持つはずは有りません。

 そして、タバサも当然のように小さく首肯いた。

「ガリアより正式に騎士に任じられている二人が庇護を約束した以上、アマト。貴方は、以後、このような坑道内に隠れ住む必要は有りません」

 意外に楽な任務でしたが、これで任務の半分以上は終了。後は、彼を安全な場所に移動させる任務が待つだけ。多分、目の前の蒼銀の長い髪の毛を持つ少女の実家の領地への移送と成るでしょう。
 確かに、アマト自身が妙な生命体と成ってはいますが、それもアリアの実家が繋いで来ている血脈と比べると、そう違いが有る訳でも有りません。彼女の言葉通り、きっちりと庇護してくれるでしょう。

 問題は、ガリア王家が、人造人間を造る方法を手に入れる可能性が有る事だけですか。

「それでは、アマト。他に覚えて居る事は有りませんか?」


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