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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第41話 フランケンシュタインの化け物
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えて、彼女の背後に存在している、ボロ布を纏っただけの大男ヴィクトルくん(仮名)の方に視線を向ける。

 この目の前の醜悪な姿の大男が、この岩塩採掘用の坑道内に棲みついたと言われている、未確認生命体ですか。……その、死体めいた青白い顔の色と黄色く濁った瞳。それから、映画や小説などではお馴染みの継ぎ接ぎだらけの肌。
 そして、更に異常と感じるのは、彼が纏っている強烈な死の臭い……。

 メアリー・シェリーが、その最初のSF小説と言われるゴシック小説に登場させた人造人間と非常に似た姿形を持った生命体。いや、普通の生命体に、あのような継ぎ接ぎだらけの肌が出来上がる訳は有りませんか。
 そう。彼は、何らかの科学的な実験により誕生したのか、それとも蘇らせられたのかは定かでは有りませんが、それでも、造られた生命体で有る事は間違いないでしょう。

 ただ、彼が纏っている死の臭い。これは実際に鼻が捉える死臭と言うモノでは有りません。それは単純に肉体が死を迎えて、朽ち果てて行く過程に発生する臭気と言う訳では無かった、と言う事です。
 ただ彼が傍に居る。たったそれだけの事で死を連想させる。そう言う類の臭い……、雰囲気を発生させていると言う事です。

 確かに、この彼が発している雰囲気は、魔法に関わりのない一般人にでも十分に感じる事が出来るでしょう。まして、この世界は俺が暮らして来た現代日本とは違い、人々が住む直ぐ傍に死が口を開けて待っている世界です。
 その中で、彼の放っている死の臭いを嗅ぎ取れば、間違いなく人々は彼を恐れ、そして忌避をする。

 多くの人々が死に対して、そう考え、思い、感じているように。
 メメント・モリ。自分が何時か、必ず死ぬ事を忘れるな。例え、それが真実で有ろうとも、そんな事を常に頭の隅に置いて暮らしている人間など滅多に存在してはいませんから。

 この坑道内で彼に出会い、そして彼を恐れたのは、彼の醜悪な容貌や、人とは思えないような巨大な身体に対してでは有りません。
 彼が纏っている死の臭いを感じ取った人々が、彼、不死者ヴィクトル(仮名)を恐れ、忌避したと言う事なのでしょう。



 まさに、フランケンシュタインの化け物と言った雰囲気の青年が、小さく、俺達三人に威嚇に等しいうなり声を上げ、そして、少しずつ後ずさりをするように、洞窟の奥に逃げ込もうとする。
 それまで、彼が受けていたで有ろう迫害を想像出来る対応。

 そして、俺やアリア、更にタバサに対する警戒感と拒絶。

「そうやって何時までも逃げ、隠れ続ける心算か。それよりは、君の存在の理由の説明を我々に行ってから、正式にガリアの庇護を受けた方が良いとは思わないのか」

 その巨大な男に対して、やや強い調子で問い掛ける俺。その言葉の中に、ほんの少しの
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