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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第二十八話 改革へ向けて
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ではなかったみたいだ、ホッとしてエーリッヒ様の傍に近づいた。

「何を考えていますの」
私の問いかけにエーリッヒ様が空を見上げた。
「宇宙の向こうの事を」
「宇宙の向こう? 反乱軍の事ですの」

エーリッヒ様が頷いた。戦争の事を考えているのだろうか、また戦場に行くの? 宇宙艦隊司令長官だから仕方ないのかもしれないけど出来れば戦場になど行って欲しくない。

「反乱軍ってどんな人達ですの」
私の問いかけにエーリッヒ様がクスッと笑った。
「普通の人達ですよ、泣いたり笑ったり怒ったり悲しんだり……。私達と全然変わりません。フィッツシモンズ中佐を見れば分かるでしょう、彼女は向こう側で生まれ育った……」
中佐の事は知っている。良い人だとは思うけど、だから反乱軍に居られなくて帝国に来たんじゃないの?

「でも悪い人達なのだって聞きました。ルドルフ大帝に逆らった人達の子孫なのだって聞きましたけど」
エーリッヒ様がちょっと小首を傾げた。考えながら私に話しかける。
「……彼らはルドルフ大帝と違った考えを持っていたのです。大帝にはそれが許せなかった。そして彼らも大帝の考えが許せなかった……」

「悪い人達ではありませんの?」
「本当に悪い人達なら良かったのですけどね、犯罪者の類なら。彼らは帝国を脱出し新たな国を作り帝国と百五十年も戦っている。彼らの国は人口が百三十億人も居るんですよ。それほどの国を作るだけの力を持った人達なんです。悪いと言うよりは有能で危険な人達かな」

「褒めているように聞こえますけど」
私の言葉にエーリッヒ様は声を上げて笑った。
「褒めているように聞こえましたか。そうじゃありません、困っているんです。簡単に勝つ事の出来る相手じゃありませんからね。これからどうすればよいか、考えているんです」
「……」

エーリッヒ様は笑うのを止めると私を見た。
「帝国は今問題を抱えているんです」
「問題を?」
「ええ、反乱軍の事も有りますが他にも問題を抱えている。放置しておけばとんでもない事になる。でも大多数の人はそれに気付こうとしない、何とかしなければ……」
そう言うとエーリッヒ様は溜息を吐いた。

少しの間二人で黙って立っていた。エーリッヒ様は何かを考え私はエーリッヒ様を見ている。問題って何なのだろう、後でフェルナー大佐に訊いてみよう。大佐はエーリッヒ様と親しいから知っているかもしれない……。
「そろそろ屋敷に戻りましょうか」
そう言うとエーリッヒ様は私の手を握って歩き始めた……。



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