第十五話 いつも前向きにその五
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「ここのアルバイトっていいの?」
「お金のこと?」
「いや、お金じゃなくて楽しいかなって思って。どう?」
「中々いいわよ」
その質問にはにこりと笑ってきた。
「やりがいのある仕事よ」
「そう、それなら」
ロミオはそれを聞いてにこやかに笑った。
「僕もね」
「それじゃあお店の人に聞いてみて」
「うん、じゃあそうするよ」
「そうしたらいいわ。それにしても」
「何?」
「あんたバイト好きよね」
「うん」
パレアナのその言葉ににこやかに微笑んで答えた。
「僕の生きがいだね」
「いいことだけれど。ただ」
「ただ?」
「あんたってお金困ってるわけじゃないよね」
「別にそれには困ってはいないよ」
彼の家は金持ちではないが貧しくもない。ごく普通の家である。
「それでもアルバイトするのね」
「だって楽しいから」
「楽しいから」
「そうだよ。それで充分じゃないかな、アルバイトする理由は」
「うん、そうだよね」
パレアナより先に彰子がその言葉に答えた。これはパレアナにとっては少し意外なことで戸惑った顔をしていた。
「アルバイトって楽しいよね」
「そうそう。彰子ちゃんもわかったみたいだね、アルバイトの素晴らしさが」
「わかったわ。だから」
「これからも頑張ろうね」
「ええ」
「まあ私もアルバイトは好きだけれど」
彰子の無邪気さと天真爛漫さにはついつい苦笑いしてしまう。そしてその横では。
「それでね。ここは」
「はい」
ナンシーがその後輩にぴったりと寄り添って何かを教えていた。
「こうするの。わかったかしら」
「わかりました」
「いいわ。そうすれば上手くいくからね」
「そうなんですか。これで」
「そうよ、安心してね。落ち着いてやれば心配はいらないから」
「はい、それじゃあ」
「しっかりね。いいわね」
「ええ」
「何か妙ね」
彼女も勘は鋭い。だから妙なものを察していたのだ。
「若しかすると」
「あっ、パレアナ」
だがここでジョルジュが声をかけてきた。
「何?」
「撮影していいかな」
「って勝手にやってるんじゃないの?」
少し意地悪な言葉で返した。
「また盗撮とかで」
「嫌だな、そんなのしないよ」
敵もさるもの。この質問にはしらばっくれた。
「安心していいよ」
「そう?だったらいいけれど」
「そうだよ、安心してよ」
「わかったわ。じゃあ信じてあげる」
「人を信用するっていうのは美徳だよ」
「人によるわよ」
「困ったなあ。僕みたいな人間を捕まえて」
「あんただからよ」
(それにしてもね)
またナンシーを見る。
(やっぱり何かあるかもね)
そんなことを思いながらナンシーを見続ける。彼女も彼女でそれを察してそっと後輩から離れる。
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