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八条学園騒動記
第十五話 いつも前向きにその三
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「高等部の二年の娘らしいぜ」
「S1組のか」
「ああ、小式彰子ちゃんがバイトはじめたらしいぜ」
「すげえな。じゃあ行くか」
「って、何で急に話が伝わるのよ」
 三日後にはもうお店には行列ができていた。パレアナはその応対にてんやあわやであった。
「おかげで忙しくて大変だわ」
「いらっしゃいませ」
 その横では彰子がにこやかにスマイルをしている。計算の方は元々頭のいい彰子なのでもうできている。だが忙しさはかなりのものになっていた。
「ねえパレアナちゃん」
「何?」
 計算をしながらパレアナは彰子に応えた。
「お仕事って人が一杯来るのね」
「こんなに来るとは思わなかったわ」
 パレアナは計算間違いがないか厳しくチェックしていた。
「これって例外よ」
「そうなんだ」
「そうなんだって行列とかで並んだことないの?」
「そういうお店って言ったことないから」
「えっ!?」
 パレアナは彰子のその言葉に思わず口を開けてしまった。
「どういうこと、それって」
「だって予約で行くお店が多いから」
「ああ、だからね」
 それでやっと彼女の言いたいことがわかった。
「それでなのね」
「うん」
「いいなあ、それって」
 といっても羨ましいわけではない。パレアナはあまり人を羨むことがないのだ。
「けれどね」
「何?」
「美味しいものって並んででも食べたくなるものだからね」
「ふうん」
 彰子はそれを聞いて頷く。
「だったらここのお菓子もそうなのね」
「ここはまた違う理由ね」
 だがパレアナはそう答えた。
「並ぶのにはもう一つ理由があるのよ」
「それって何?」
「お目当てがあるかどうかってことよ」
「お目当て?」
 それが自分であるとは露にも思わない。こうしたところはとことんまでに鈍感な彰子であった。
「まあいいわ。それでね」
「こっちの計算は終わったわよ」
「あっ、早いわね」
 そういうのは早い。
「しかも合ってるし。彰子ちゃんって理系強いからね」
「まあ計算とかは子供の頃からやってるし」
「継続は力なりね」
「そうだと思うよ」
「まあ中には訳わからない方向に精進して前進してる人達もいるけれど」
 テンボとジャッキーの迷探偵コンビやフランツのことである。クラスどころか学年きっての大馬鹿者で学園でも有名人になっている三人である。
「やっていくことって凄く大事だからね」
「私もそう思うよ」
「ペリーヌなんかはすぐに一攫千金に走るけれどね」
「私はコツコツとやっていきたいな」
「そうそう、それが一番だよ」
 ここで新たな登場人物であった。
「あれ、あんたも来たの」
 彰子とパレアナの目の前に奇麗な茶色の髪と素朴な黒い目を持つ朗らかな少年がいた。動きやすいラフな服を着て黒い
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