現実と看護
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現実世界に戻って最初に見た顔、それは黒髪に眼鏡、そして目に涙を溜めた少女、朝田 詩乃だった。今は抱きつかれているが、正直寝たきりだった俺にはつらい
「……生きてて……よかった……」
「詩乃……ただいま」
「おかえりなさい……」
詩乃はそう言って放してくれた。久しぶりに見る詩乃の笑顔は可愛かった。そんなことを思っていると、突然背筋が凍ったような気がした。懐かしい感覚。アインクラッドで何度も感じた冷たい感覚……そう、殺気を
「……どうしたの?」
俺の様子を不審に思ったのか詩乃が訊ねてきた
「……いや、何でもない」
詩乃を心配させないように俺は笑顔を作りながら周囲をうかがった
「……そうか」
詩乃の話を聞くと、俺の両親は今は日本にいるらしい……そろそろ来るころかなと思ったところで扉が開き、二人の人間が入ってきた……しまった、フラグだったか。とにかく、俺の両親が入ってきた
「……よくもぬけぬけと生きて帰ってきたものだな」
「そんな言い方はっ!!」
「いや、良いんだ詩乃」
「でも!!」
俺が首を振ると詩乃は黙り込んだ。俺の父親は、詩乃を見ると呟いた
「ふん。殺人者が……」
「貴様……その台詞を撤回しろ」
「なぜ撤回しなければならない?事実を述べただけだろう?」
「貴様は、詩乃の気持ちを考えたことがあるのか!!」
「そんなこと……どうでもいい。とにかく、お前はすぐにその殺人者との関係を断て。わかったな」
「……断る……」
「何?」
「断るって言ったんだ。詩乃は俺の支えになってくれた。貴様が奪ったもの……安らぎをくれた。だから、何と言われようとも詩乃は放さない!」
……後から考えると、これって告白じゃね?
俺のことはいいが詩乃のことを悪く言うのは、許さない。うつむく詩乃。俺の服の袖を強くつかんでいる。そしてやつは再び俺の方を向き口を開いた
「口のきき方に気をつけろ。……どうやら、教育が足りなかったようだな……いや、ゲームの中で忘れてしまったのか?まあいい。退院したら、自由はないと思え。私の後継者となるにふさわしい人物にしてやる」
そう言って父親は出て行った。そして、残ったのは母親だった
「生きてて、よかった……」
「は?」
……おかしい。俺の母親は俺に厳しく、縛り付けてきていたはずだ。そんな人から心配の言葉が出るなんて……
「あなたがゲームから出てこれなくなったとき、私はあなたにつらくあたってしまったことをとても後悔したわ……」
……分からない……何で今さら親の顔をしてるんだよ
「出ていけ……出ていけよ!」
「すぐにはわかってもらえないかも
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