宇宙の蜉蝣
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
「違うとでも?」
「ならば、作戦行動中の我ら海兵の行動を妨害した理由をクワサン殿にご教示願いたい。」
ー小煩さい小便ガキだねぇ。総帥の肉便器如きが調子に乗るんじゃないよー
内心の苛立ちは隠し軍人らしい態度でシーマは返答を続ける。
「サイド3宙域に近づく艦船は、事前に総帥府への連絡義務がある。その連絡が無い故職務に従ったに過ぎない。」
「ほう……戦時とは言え総帥府も落ちましたな。」
シーマの発言にクワサンの眉がつり上がる。
「無礼であろうシーマ少佐! 総帥府を侮辱する事はギレン総帥を侮辱する事であるぞ! そこを動くな! 私自ら貴様を修正してくれる。」
怒声がスクリーン越しにリリマルレーンの、ブリッジに響きわたる。萎縮する物はいない。自らの力に因らない権威など、シーマ達が最も唾棄すべき物だ。
「小便臭い小娘がこのシーマ様にお説教かい? いいよ。逃げはしないからかかって来な!」
相手の発した怒声とは違い、落ち着いた声色であるが、その凄みは相手を萎縮させるのに充分過ぎた。シーマは更に言葉を続ける。
「本国でのうのうと暮らしてるだけの奴らに舐められる程、このシーマ・ガラハウ落ちてないよ。海兵の戦い方をあんたに教えて上げるよ。」
コッセルと目が合う。無言でシーマは頷く。
間髪入れず発射されたメガ粒子砲は、制止状態のバルバッロサの左翼を掠めた。直撃こそしなかったが至近距離である。外部にむき出しになっていた対空砲の何基かは、熱と衝撃で使用不能になっているだろう。
「今のはお情けだよ。そこをどきな、我ら海兵は現在ドズル閣下の指揮の下行動中である。」
ドズルと言う単語にクワサンは眉を潜めた。
「ドズル閣下だと?」
「知らなかったのかい? 報告はきちんと行ってる筈だよ。臨検とかやってる暇あるんだったら、報告位は確認して貰いたいね。あんたらどんだけ平和ボケしてるんだい。」
露骨に焦り顔は浮かべなかった物のクワサンは、一旦通信を打ち切る。待ってる間のリリマルレーンには、呆れとも諦めともつかない空気が流れる。この戦時にこの体たらく! 誰もが言葉を発しない物の考えてる事は同じである。
本国のこんな奴らの為に私は前線で戦ってるのか……
シーマの心に絶望と不信が広がる。開戦のあの日、サイド2に毒ガスを注入して以来、拭う事の出来ない絶望と不信。深い闇に捕らわれた心。考えまいとしても、本国の堕落した様を見せつけられたその心は、より一層深い闇が覆う。
もうどうだっていいさ。ジオンが勝とうが負けようが、私は私で好きにやらせて貰うさ。私に付いてきてくれる馬鹿共も食わせないとダメだしね。
リリマルレーンの艦橋を見渡す。そのどれもが軍人とは呼べない様な者達ばかりだ。開戦前は
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ