宇宙の蜉蝣
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通信が送られる。
「いいかい、間違っても当てるんじゃないよ。ビビって貰えれば充分だ。」
「うちの砲撃手は優秀だから心配には及びませんぜ。しかしシーマ様、本当に宜しいので?」
「心配する事はない、責任は私が取る。お人形さんにバカにされて黙ってられる程このシーマ・ガラハウ、人間出来て無いよ。」
不適に笑うシーマを見てコッセルは頷く。
「それに今回は後ろにお偉いさんが付いて来てるからねぇ。ザビ家の看板を利用させて貰うよ。」
立ち上がり腕を前に突き出すと同時にリリーマルレーンの主砲は発射された。虚空を貫きバルバッロサの右脇を掠めると同時に、後続の四艦から発射されたエネルギーの粒子が左脇を掠める。
初弾からの挟差。容易に出来ない技術である。ジオン海兵隊、その評判にそぐわない屈強な兵の集まりである。
さすがに応射は無かった。有ったのはヒステリックな通信である。
「貴様ら何をしている!こっちは味方だぞ。」
通信スクリーンに写った神経質そうな顔の士官が金切り声を上げる。シーマは内心の愉快な気持ちを表には出さず、澄ました顔を作り返答した。
「味方だったかい。それは失礼した。停船せねば砲撃すると言われた物でねぇ……敵だと誤認したよ。」
「こんな所に敵なんかいるか!貴官らは我ら親衛隊を舐めているのか!」
「変な事を言うねぇ。敵がいない宙域なら停船信号など必要無いのでは? こちらは常に臨戦態勢故、悠長な事はしてられないんだよ。」
的を得たシーマの言葉に通信スクリーンの相手が黙る。苦虫を踏みつぶしたその顔は、シーマを睨んだかと思うと姿を消した。その様子を相手側に見えない所に陣取っているコッセルを始め、艦橋にいる全員が、口元に笑いを浮かべながら成り行きを見守っている。
通信スクリーンは一瞬ノイズが走り、ブロンドの髪を持つ若い女性士官が写し出された。総帥府直属を示す赤い軍服にはシーマと同じ少佐の階級章が見える。
「本艦の艦長を勤める総帥府のクワサン・オリビーである。今回の件はどうした事か?」
「はっ、突然臨検指示を受けましたので、敵だと判断し攻撃を致しました。」
同じ少佐とは言え、総帥府直属士官は2階級上の扱いを受ける為、シーマは先ほどと違い敬語を以て答える。
「此処は本国である。敵から攻撃をうける筈など有るまい。」
先程と同じ問答の繰り返しである。辟易としながらも憮然とした表情でシーマは続ける。
「ソロモン迄敵が迫ってる以上は、本国といえど安穏とした状況では無いと判断致しました。」
「そんな訳は無かろう。この宙域の守りは完璧である。」
「前線勤務ばかりで多忙故、本国の情報迄は分かりかねます。クワサン殿は、我ら海兵が故意に撃ったとおっしゃる訳か??」
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