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ソロモン会戦記 
ソロモンの悪夢(中)
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事が出来たのならば、彼の記念すべき初陣の初弾は、」忌まわしき連邦の艦に幾ばくかの損害を与え得たであろう。

 寸での所で危機を脱出しえた連邦からの反撃は苛烈な物だった。対空機銃が奏でるのは死への協奏曲、観客はカリウスのリックドム。強圧的な指揮者が振るタクトは観客にも協奏曲への参加を強いてくる、一度観客が取り込まれたなら、ばタクトは益々凶暴となり曲は葬送曲へと様変わりする。
葬送曲の演奏が終わった後、残されるのは無理矢理葬送された観客の残滓、それは永久に深い闇の中を漂いながら、己の為の鎮魂曲を奏で続ける。
この宇宙は鎮魂曲で満ち溢れている。ラプラス事件より始まった宇宙世紀は、開闢以来鎮魂曲が鳴り続けている。この1年で総人口の半数以上の演奏者を得ながらこの鎮魂曲はなおも止まる術を知らない。


 無論ガトーは鎮魂曲の演奏者になる気など全く無い。彼が演奏する曲は連邦への葬送曲。戦友との協奏曲。そして勝利の凱歌、これ意外に彼に相応しい曲など存在しない。
勿論、これは彼個人のみならず、302哨戒中隊やケリィ・レズナー等、部下や戦友問わず彼に関わる全ての人間に適応されるべき物でもある。

 行動は早かった、カリウスを狙っていた対空機銃の1基を、ジオンの量産機としては唯一ゲルググのみが装備しているビームライフルで打ち抜き、沈黙させたかと思うと、間髪入れず彼に狙いを定めていた主砲を三点バースト射撃により跡形も無く粉砕する。更にこの一連の行動の間に距離を詰め接近戦に持ち込む事で対空攻撃を無用の長物とした。
懐に飛び込んだガトーのゲルググに敵艦が成す術は最早無い。

ーなんと他愛ない。鎧袖一触とはこの事かー

 機体に慣れていないとは言えこの動きである。恐らくはいつもの半分程の力を自分は出せていないだろう。その自分に対してこの体たらくである、せめて一思いに葬るのが武人としての礼儀であろう。

「さらばだ、腐った連邦に属さなければ、この様な惨めな思いをする事も無かったであろうな」

 敵に対する餞としては最大の皮肉であろう。ガトーの思いを代弁するかの様に、至近距離から放たれたライフルの光軸は、サラミス型の主機関部に小さな爆発を生じさせたかと思うと、ほんの一瞬の沈黙の後、艦体を光球と変えた。

 轟沈。その言葉に相応しい大きな爆発であった。爆発の勢いは艦体を四散させ新たなスペースデブリを無数に作りだした。、


 勢い良く飛散した、かつてのサラミス型であった物の固まりを半自動操縦で回避しながら、ガトーは次の獲物を探す。少し離れて左後方には、カリウスのリックドムが、弾丸の如く飛来するサラミスの怨念を危なかしい動きで避けながらなんとか着いて来ている。


「ガトー来たぞ、連邦のモビルスーツだ」

 ケリィからの通信が入る。遅蒔き
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