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ソロモン会戦記 
思惑
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軍人は、ただ戦うのみ。何かと理屈っぽい、突撃機動軍の連中には、理解しえぬ事であろう。

「はっ、失礼しました閣下。しかし、援軍が僅か一機では、我々には厳しい戦いになるかと・・・」

「分からんぞ? 俺がこのビグザムとか言うので、暴れ回れば一個艦隊位は、道連れに出来るかも知れんぞ。」

悪戯っぽい笑みを浮かべて、ドズルが言う。
ドズルの力量と、ビグザムの性能を、考慮すれば出来ない話ではあるまい。
だが、ドズルのこの発言は、当然ながら本心ではない。

これはゲームや、アニメとは違い戦争なのだ。
戦争に英雄は居ない。只の殺し合い。
それを一番分かってるのは、ドズル自身なのだ。
一個人の、英雄的活躍で、戦争が終わるのであれば、そもそも戦争など発生しない。中世の騎士よろしく決闘で、白黒つければ良いのだから。

「無論冗談だ、参謀長。一個艦隊沈めた所で、意味などないからな。俺が求めてるのは、圧倒的勝利だけだ。」

「本心からでは、無いと思ってましたが、安心しました。しかしどうするのですか?現状は極めて不利ですが」

「本国へ行く。行って、直接総帥に直談判をしてくる。最終防衛ラインなど知らん、ここが抜かれたら、ジオンは負ける。それを理解して貰わねばな。」

時間はある。
グリューネマン達参謀部の、見込みでは、予測される進行日時は、12月25日前後。
ソロモンから本国サイド3迄は、一日もあれば着く。
連邦の動きが、多少速まったとしても、十分対処可能であろう。ソロモンの士気、連度は極めて高く、防衛体制に隙は無い、ドズルが多少の間離れても問題は無い。

「分かりました。それで出発は?」

「今すぐだ。一秒たりとも無駄には出来ん。」

事が決まれば迅速に動く、ドズルの真骨頂だ。

「コンスコン少将に命じた、木馬の追跡は、撤回命令を出した。留守の間は、コンスコン少将と貴官に任す。」

「はっ!」

グリューネマンの返事を聞くや、ドズルはその巨体を翻らせて素早く扉に急いだ。
ラコック大佐は、副官である為当然同行する。その二人の背中を、見送りながらグリューネマンは思った。

ーこの司令官となら勝てるー



宇宙世紀0079年12月10日
宇宙攻撃軍司令官ドズル・ザビ中将は、本国サイド3に向けて、一路艦上の人となった。
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